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水を撒いて 看板ひとつ なつかしい顔には声がない なのに不思議と笑ってる わたしたちは 「また明日ね」って 手を振りながら きつく唇を噛む 降る、 傘のふちから溢れる新しい雨 犬も猫もよい人に貰われていったんだよ と、まるで嘘の出来事のように話して笑って あの人は透きとおりました あの人というのは わたしの さいあいの人であったと 思います 「今年も庭に青い紫陽花が咲きましたよ」 「夏休みになったらすぐそちらに帰ります」 あやうい紅よりも ひとつひとつ けして満たされない両腕に 添えてあげたい 書きかけの便箋とか 書きかけの便箋とか を 脾臓にうつくしい影 霜の夜までは無理でしょう 白衣の人は ちいさくはっきりとした声で それから 紫陽花は崩れるように枯れました 今日はとても 寒い お砂糖と馬鈴薯を買って 夕飯を作ろうとしても わたしの手はからっぽで、 傷のない野菜のやさしさは 指をほどいていく ぺたりと床にはりついて たちまち背中から伸びる影が 透き通って落ちてくる あ、と気づいたときから わたしを黒枠で囲む ぎこちなくしかし決定的に 違ってしまう 子どもが走ってきて、転んで泣き始めた それを見ていた子どもが泣き始める 潮だまりには ヤドカリが動いて 頭上にはとんびが おおきく円を描いている わたしは時折 影をつくり 貝殻に耳を傾けたり、してる だれも振り向こうとはしないのなら せめて 空は低く欄干の艶 見下ろせば薄の原 薄化粧して迎える初盆 ひとすじの合掌のすがたかたち 山も海も近く もう既に一枚の家もない 花を飾ってくださるのなら どうか紫陽花以外でお願いします 水を撒く 遠い日に、はじけて 祈るような草いきれが 便箋を揺らす その端に描かれた絵には まだ 春が眠っている *ひろかわ文緒さん「初夏をめぐる」へのオマージュ、あるいはラブ (オリジナル著者許諾済)
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