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血みどろの青い布の下で、今生み出されたばかりの死体が、かえりたい、と一息ついて、指輪の淵の皮膚から透け始めて、もう五日も経った。彼は、亡命先のアメリカで、フットボールの試合中に、審査員に脳髄を貫通されて、もはや、かなしい、うれしい、という感情さえ抱けない、ただの人形に過ぎない。目を覚まさないようそっと布をめくり、耳に糸を引っ掛けてぼくは立ち去る。窓の向こうにクレーンが立ち上がる。そうして、窓の向こうから糸に引っ張られて、腐敗した首は空高くに上り、作業員の一人が、これが君の仕出かした最後の罰だ!と叫び、青空の向こうに全てが消え去って、何かがガラスを突き破る音が、色ひとつない世界を、駆け抜けて響く。 正午、太陽は東へ、東へと下り、雌牛がぼくの耳元に息を吹き掛けていく。――カルカッタにて、渡り鳥の声を聞き、燦然と降り注ぐ黒光りから、雄叫びがどこか遠くの土地で割れてしまって、皆が手を赤くして泣いているのを、永遠に捉え続けることが、わたしにはできない――とこのように聞こえる。ぼくの周りの人たちはただ手を合わせ一心に祈っている。それはこの国の人々にとって、牛が神聖な動物とされているからだろう。やがて無数の菩提樹の陰で、継ぎ接ぎだらけの男が立ち上がり、祈っている人々の耳を手当たり次第に引き裂いて、自分の口の中に詰め込んで、去ってしまう。 ガーゴイルの石像の傍で、行き交う女を次々と口説いている男に出会う。「ここはたったひとつのプラハだ。」男はそれだけ言い残して去っていく。男に台詞に心底魅入ってしまったぼくは、男と同様に女を口説き始める。「ここはあなただけのプラハだ。」ぼくはプラハという言葉の意味を知らない。わかっているのは、知ってしまえば全てが終わってしまう、ということだけだ。ぼくがプラハという言葉の意味を知ろうとしないために街には雨が降らず、この辺りの土地はひどく渇いている。ぼくはなかなか女を連れていくことができず、人々はぼくを避けるようになり、周りには誰もいなくなってしまう。仕方なくぼくはガーゴイルの石像を口説き、降り始めた雨がぼくを打つ。 辺りを、 打ちつける雨は、 いつも、 惨劇を含み、 わたしも雲に顔向けて、 口に含む、 湿度、服用するということ、次々と後ろ姿を見届けて、その先にある二つの砂丘で、リュックの中に、ぼくが惜し気もなく詰め込んだかなしみ、うれしみを、何度も何度も連れ出していく、そうして、雨でぐっしょり濡れたポプラ並木を抜けて、覚えのない野原を、火傷ひとつない裸足で歩く、朽ち果てた木に背中を向けて(影が立ち上がりぼくに寄り添って歩き出した)空は幾重にも裂けて見えなくなった(まだ顔も見ていない女の鎖骨がちらついて)かえりたい、まだ誰もみたことのない来光の領へ、
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