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・ ぼうっと土の上に立って 夕暮れなんて見ていたりすると そのまま足の裏から根が生えて そこに根づいてしまいそうになる 慌てて足を引っこ抜いて歩きだすけれど やっぱり幾人かは油断していて うっかり根づいてしまった人もいて そういう人たちはもう人間ではないけれど まだ植物にもなりきれていず 口だけを僅かに動かしていて 水をあげるとごくごく飲み干す 春とはそんな季節である ・ 濁った銀色の月光が ひとびとの髪を 王冠のようにぼんやりふちどっている だから月の出ている晩に すれ違うひとたちは 王冠をかぶったまま逃げてきた 薄情者の王様や王女様に見える ・ 空がうっすら薄紅に染まるほど 桜の咲いた上野恩賜公園で 五年前のわたしとすれ違った はっと振り返ったらもういなかった 夢だったのかと歩きだすと すれ違った人の振り返る気配を感じた いま振り返ったその人は 五年後のわたしであっただろうか ・ 春 一回まばたきをしたら いま もう冬になった 十回まばたきをしたら十年たつのかもしれない 百回まばたきをしたら百年たつのかもしれない ねえ知らないうちに わたしたちみんな あ の形にくちをあけたまま ぽかんと死んでゆくのかもしれない
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