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・ 公園のすべりだいの裏 公衆トイレの壁面 雑草の生い茂ったトンネルの外壁 そういううすぐらくて湿ったような場所には 決まって つぶつぶと無数の電話番号が書きつけられている 等間隔に産み付けられた虫の卵みたい そっとなぞろうとして躊躇った 何かどろりとしたものが指についてきそうな気がして そしていったん付着したらそれはもう どれほど手を洗おうが落ちないような気がして ・ 白目をむいて 自分の内側を見ている わたしの内側はいつだって ただ真っ白な雪原 の筈なのだけれど 今日に限って 雪原のなかに点々と人跡が残っていた 知らないうちに 誰かに侵入されたのかもしれない (誰かに侵入されることを わたしが望んだのかもしれない) 慎重に人跡を追う 雪原の果てに 途方に暮れたように体育座りしてるひとを見つける 顔も見ないまま咬み殺した お、 という声と共に ぱ、 と雪原に血が散った 痙攣するその体が 温度を完全に失ったことを確認してから 黒目に戻ってゆっくりお茶をのむ 乱されなかったことに安心する 顔は見えなかったけど あれはたぶんバイト先のカタギリさんだ 鼻の先に ロッカールームで嗅ぎ慣れた体臭が残っている おつかれさまです と言う声が耳奥によみがえってくる ・ 深夜 さまざまな人のかたちが灼きついてしまって もうまともに見えない眼球を あたらしいものに取り換えている 眼窩にひんやりした眼球を嵌め込んで 目を開けるときがいちばん不安だ わたしがこれまで見てきたものの どれぐらいが錯覚や思い違いだったんだろう 蛍光灯を見つめる 灯りの周りを古い毛布みたいな蛾が飛び回っている しばらくそうしていてから わたしは上着を羽織って身支度をし家を出た これまでの錯覚や思い違いをただすために そうしてまた新たに 錯覚や思い違いをしてゆくために ドアを開けたとき 恋に狂う猫の群れみたいな風が 渦巻いてぬるりと首筋を舐めてった もう 新しい季節の気配がしていた
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