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「ツェラシェル、生まれてきてくれてありがとう。」 ツェラシェルは目を丸くした。 そんな3月9日の話。 【3月9日】 ツェラシェルは自分が生まれた日なんて感謝した事が無かった。それは自分の身に降りかかった不幸のせいだ。 幼い頃から人の命を奪うことしか教えられず、人の命を寿ぐなんて事は教えられなかった。 そんなツェラシェルは、まず妹たちを愛する事を知り、次に一冒険者(…と呼ぶには少々有名過ぎたが)であるシェスランを愛する事を知った。 けれど、妹たちの生まれた日も、シェスランの生まれた日もツェラシェルは祝う事は無かった。祝う習慣を知らなかったからである。 「ツェラシェル、誕生日おめでとう。」 シェスランにそう言われてツェラシェルは目を丸くした。 「驚いた。ノーブルには人が生まれた日を祝う習慣があるのかい?」 言うと、今度はシェスランが目を丸くする番だった。 「違うわよ、ノーブルだけじゃなくて世界中で誕生日を祝う習慣があるのよ。」 「どうして?生まれた日なんて年を数える為のただの記号じゃないか。何がそんなにめでたいんだか…。」 「…生きている事を祝うのよ。それまで生きてきた事、生きて来られた事を祝うの。それと…生まれてきてくれてありがとう、生んでくれてありがとうって、祝うのよ。」 「別に俺は生んでくれなんて頼んじゃいないぜ。祝う事なんてない。」 困惑してシェスランから顔を背けたツェラシェルにシェスランは笑った。 「バカね、ツェラシェルは。」 「バカじゃないさ。」 「ううん、やっぱりバカよ。ツェラシェルは。」 シェスランはツェラシェルの背けた顔の方へ回り、また笑顔を見せる。 「私はツェラシェルが生きていてくれて、生まれてきてくれて嬉しいもの。祝う意味はあるわ。」 だから、と前置いてシェスランはツェラシェルの手を握った。 「ツェラシェル、生まれてきてくれてありがとう。」 ツェラシェルは目を丸くする事しか出来なかった。 彼が誕生日を心から祝えるようになった、ほんの少し前の3月9日の話。 END
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