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†嘘つきの日 「今日は嘘つきを大切にしなきゃいけない日なんだって」 相変わらず、夜中にあらわれた何を考えているか分からない一見ぼやっとした黒髪の少女が俺に逢うなり言い放った。 「ハ?」 「今日は嘘つきを大切にしなきゃいけない日なんだって」 聞き返したと意志疎通は出来たものの相変わらず訳分からないことを繰り返して話す。 「……………あー、それでアンタはここに何しに来たんだ」 夜よりも深い闇の色をした漆黒の髪、その深い闇に映る白い顔に蒼い宝玉のような二つの眼が力強く意志という名の光を放っている少女。残念ながら、強い意志があっても真意と言うのが常人にはさっぱり分からない質の悪い少女でもあったが。 「大切にしなきゃいけないから、逢いに来た」 「逢いに来た、って最近毎晩じゃねぇか」 「だって、アイラ、暇だもん」 「こら待て、暇だから来ていやがるのか、アンタ」 目的わからずに近づいてきて、何をするわけでもなく一緒に居て、俺に逢いに来ている割に他の奴には見せないような仏頂面で傍にいる。 「帰れ」 「嫌だもん、つぇらの言うことなんて聞かない」 「可愛くねぇ」 「可愛くなくて良いもん」 あー言えば、こう言う奴だ。何でこんなに小憎たらしい小娘かな。 「つぇら、笑ってる」 「ハイハイ、アンタはカワイーカワイー」 「嘘つき」 「嘘つきは大切にしなきゃいけない日なんだろ?」 仏頂面をますますしかめて、可愛い面を見せる少女。頭を撫ぜてやろうとしたら、寸前に逃げると言う可愛い一面を見せやがる。 「ダメ」 「ケチだな」 仕方ないと手を引っ込めたら、安全だと言うばかりに無防備に近づいて、事もあろうに俺の頭を撫ぜる。 「アイラの頭をなぜるのはダメだけど、代わりにアイラがなぜてあげる……だから、かがんで」 背伸びしてようやく届くらしい身長は抱き上げた方が早いんじゃねぇか、と思ったものの大人しく言うことを聞いてやった。 「……どうせ、俺とアンタしかいねぇしな」 「ん?」 「何でもねぇよ」 こんな無防備な癖に手を出しにくい奴だったらあの旦那は苦労しているだろうな、ざまあみろ。 俺のなけなしの体力と気力を奪っていくような厄介な少女。 「………ー、」 そんな奴なのに、小さな掌からは不思議と身体に染みるような力が宿っていた。 「……痛いの、痛いの、飛んでいけー」 よく聞くと小さな小さな声で脱力するような呪文を唱えているのが聞こえた。しかも、イクスキュアを併用して唱えているようだ。 (……そりゃ、染みてくるハズだぜ) ふと、少女がほざいているかとに思い当たる節があった。可愛い双子の妹たちか、それともあの旦那か、前者なら俺とアイラが会っていることがばれていることになり、後者ならかなりムカつく。だから、あえて少女に問う事はしなかった。 「思っているよりは俺はアンタのこと、気に入ってるぜ?」 「嘘つき」 即答しやがる可愛くねぇ小娘。頭を撫ぜる手を放し、地面にしゃがむ。地面をポンポンと叩き、俺にも座るように促す。 背中合わせにして、少女は俺にもたれ掛かる。 「俺のこと、嫌いか?」 「キライだよ」 「そうか」 俺を嫌っている奴がいる。それも、俺が存在している証。皮肉だとは思ったが、俺にはそれくらいが丁度いいかもしれない。 「……アリガトよ」 本心からの言葉だったが、アイラはそれが気に入らなかったみたいで、聞こえないふりをしてる。ただ少し、背中の重みが増した。 生きて死ぬだけの命。 あとどれくらいかわからねぇ命だけど、その中で自分が生まれて来たのを確認するのもたまには悪くねぇみたいだ。 (アリガトな) もう一度だけ、心の中で呟いてみる。それは背中の奴に対してだったかもしれねぇし、他の誰かに対してだったかもしれない。 ただ、今日と言う日を誰かと一緒に居られたと言う奇跡に感謝したくなったのかもしれない。 END
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