エターナルゾーン日記板
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By TUINDAYO
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「こっちだ」
案内された先は、村外れに建つ小さな一軒家だった。
外見だけを見れば、どこにでもありそうな古い家だ。
だが。
壁面には複雑な模様が幾重にも描かれていた。
文字にも見える。
絵にも見える。
しかし何を意味するのかは分からない。
それがかえって、この家の異質さを際立たせていた。
「入るぜ、じいさん」
アルが扉へ手をかける。
すると。
まるで待っていたかのように扉がひとりでに開いた。
「アレレ?どどどどういうことっス?」
サンが耳をぴくぴくさせる。
「すごーい!なにこれ!?」
ミナも思わず目を丸くした。
「なんだかコワいです・・」
ルーデルは恐る恐る家の中を見回す。
リッカだけは慣れた様子だった。
「こっちだ、さっさとしろ」
アルが先導する。
一行は細い通路を進んでいった。
外観からは想像もつかないほど内部は広い。
まるで別の空間に繋がっているようだった。
やがて。
奥に巨大な扉が現れる。
金色の装飾が施された豪華な大扉。
小屋の中にあるとは思えない代物だった。
「大ジジ様、ただいま戻りました」
リッカが恭しく頭を下げる。
「おお〜はいれぇ」
のんびりとした声が返ってきた。
リッカが扉へ触れる。
すると大扉は重々しい音を立てながらゆっくりと開いていった。
その先には。
古びた椅子へ腰掛けた老人の姿があった。
「よお戻ったのお・・リッカ」
「お久しぶりです」
リッカは膝をつく。
老人は穏やかに目を細めた。
「なんじゃああんたら・・?」
「申し訳ありません」
リッカは頭を下げる。
「予言にあった銀髪の少年は・・」
「来れなんだか」
「はい」
リッカは悔しそうに頷いた。
「代わりにその仲間をお連れしました」
「フム」
老人は静かに頷く。
そして。
一人ずつ見始めた。
まるで本のページをめくるように。
ゆっくりと。
丁寧に。
「・・・」
ミナが思わず姿勢を正す。
ルーデルも居心地悪そうに身を縮めた。
「あのー・・?」
「大ジジ様人を見る目に長けてるの」
リッカが説明する。
「いま、あんた達を見定めているのよ」
「あ、あんまり見られると恥ずかしいです・・」
ルーデルは顔を赤くした。
「ふむ・・ほお・・これは・・」
老人は何度か頷いた。
「もうええ、よおわかった」
一同が少しだけ安堵する。
「ではさっそくはなそうかのお・・」
老人はゆっくりと語り始めた。
「今よりひと月ほど前のことじゃった」
その声に合わせるように部屋の空気が静かになる。
「わしら村の民は町より離れたこの厳しい地で、古来より細々と暮らしておった」
老人の視線が遠くを見る。
「作物を育て、人を育み、ただありふれた日常を過ごす」
「それらだけが我らの世界の全てであり、生きる理由じゃ」
静かな声だった。
だが。
その言葉には確かな愛着があった。
「そんなある日、事は起きた・・」
そして。
長い沈黙。
一同が続きを待つ。
だが。
「・・・なんじゃったっけ?」
しーん。
部屋の空気が止まった。
「・・・・・」
リッカが静かに頭を抱える。
「はぁ・・これだもんなぁ・・」
アルが大きくため息を吐いた。
この反応を見る限り。
どうやら日常らしい。
「私が話します・・」
リッカが立ち上がる。
「大ジジ様はベッドでご安静に」
「お・・おおぉ・・」
老人は素直に引き下がった。
慣れている。
リッカもアルも。
そして大ジジ本人も。
「じゃあ、改めて説明するわ」
リッカの表情が真剣になる。
「今・・私たちの村は存亡の危機に陥ってるの」
一同も自然と姿勢を正した。
「ひと月前、センティメラ様の祠から黒い霧が・・」
「せ、センティメラ様!?」
ミナが思わず立ち上がる。
「あの十一神の一柱とされる・・!?」
「そうよ」
リッカは頷いた。
「まさかこんな場所に祀られていたなんて・・」
ミナは驚きを隠せない。
だがリッカは話を続けた。
「知ってる人もいるだろうけど」
「センティメラ様はすべての感情を司る神様よ」
その声が少しだけ重くなる。
「その祠から現れた霧は・・すぐに村全体を覆いつくした」
リッカは拳を握った。
「私とアルはたまたま村外れよりさらに外にいたから助かった…
大ジジ様も、この家に張られた結界のおかげで霧を免れたわ」
あの日の光景が脳裏によみがえる。
「霧が晴れた後、私とアルは二人だけで村へ戻ったわ」
その時。
リッカの表情が僅かに曇った。
「でも・・」
静かな声。
「そこにいたみんなは・・一切の感情を失っていた」
部屋が静まり返る。
リッカはゆっくりと目を閉じた。
「いつも入口で怒鳴ってた鍛冶屋のおじさん」
「畑で歌を歌ってたおばさん」
「毎日追いかけっこしてたガキどもの声すら聞こえない」
声が少し震える。
「みんな立ったまま動かなかった」
何も見ていない瞳。
何も感じていない顔。
笑いも。
怒りも。
悲しみも。
喜びも。
何一つ残っていなかった。
「呼んでも返事はない」
「肩を揺すっても反応しない」
「ただ・・・そこに立っているだけ」
リッカは唇を噛む。
「生きてるのに」
「まるで人形みたいだった」
誰も言葉を発しなかった。
その光景が容易に想像できてしまったからだ。
「一切動くこともなく・・今も村のみんなは何をするでもなくじっと佇んでいるわ」
「おかしいのはそれだけじゃない」
「食べも飲みもしないのに……みんな、衰弱すらしていないの」
ルーデルが小さく息を呑む。
「私とアルは祠へ向かった」
「原因を調べようと思ったから」
「でも祠の周りはもっと濃い霧が立ち込めていて入ることすらできなかった」
そこでアルが口を開く。
「困った俺たちはじいさ・・村の長に助けを求めた」
「長には不思議な力があったからだ」
「そうして長の助言を受けたリッカがお前らを探しに行ったってわけだ」
アルは腕を組む。
「どうだ、わかったか?」
「は、はぁ・・なんとなくですが・・」
ルーデルは困惑しながら頷いた。
「???オイラにどうしろって言うんすか」
サンは相変わらずだった。
「あんたはどうでもいいわ」
「ソッ・・」
即座に黙る。
「ダメよ、そんなの」
ミナが首を振る。
「私もエレナも女神テルミラに仕える身」
「別の神に仕える者が、神域へむやみに踏み入ることはできないわ」
「おい」
不意に声がした。
「なによ・・ちょっと黙っててちょう――」
「あいつ、出て行ったぞ」
全員が固まる。
「・・・は?」
リッカが振り返る。
そこにいるはずの小さな姿がない。
「・・はっ!?」
ミナが青ざめた。
「エレナ!?」
「い、いつの間にかエレナちゃんが・・!」
ルーデルも慌てて立ち上がる。
部屋の空気が一変した。
そして。
グルンガ以外の誰も気づかないうちに。
エレナはどこかへ消えていた。
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[返信] [編集]2025 10-10 20:16 [pc]
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