03/31 10:44
「彼女の絵」
りんご
高校生のころ、絵を描いていました。賞をとった訳では無く、特別に評価されたことも無かったんですが、芸術の方面に惹かれていて、結構本気でそっちに進もうと思ってたんです。
その時、同学年で芸術関係に進もうとしていたのは、私ともう一人の女の子だけでした。
彼女と私は放課後の閑散とした美術室で、黙々と絵を描いていました。
彼女は試験の前に二枚の絵を用意しなければなりませんでした。
私は彼女の描く抽象的な絵のファンで、彼女が一体どんな絵を描くのか楽しみにしていました。
彼女が仕上げた一枚の絵は、彼女自身を投影させた一人の少女でした。
題材はいつも見ていた彼女なのに、まるで生まれて始めて見たかのような気持ちにおちいりました。
絵を描いた彼女自身のことも、何か神秘的で、計り知れない存在に感じました。
そして同時に、自分に足りないものを悟りました。
それは才能と一言で言ってしまえば余りにあっけなくて、あの時彼女の絵を通して気づいたことはそれに収まりきるものでは無いと思うのだけど、
確かに一面的に言えば、それは才能の差でもありました。
自分のもつ世界観と、それを表現する能力。
結局私は志望校を落ち、進路を変更することになったのですが、
あの時自分の中で芸術に対する思いに決着がついたのは、
彼女の絵を見たことがきっかけだったように思います。
人は圧倒的なものを見ると、嫉妬や羨望よりも先に、ただただ感動するのだと知りました。
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