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[83] By 相良
09-01 22:24
「……あぁ、黒幕の事は聞いた…その事で躊躇っていた訳じゃない…っ…お…王子の様子を見ただろ?もう今にも死にそうだ…」

リオは冷や汗を軽く流しながら言った。

「…?それがどうした?今さら言い訳か…?」

黒服の男はそう聞き返した。

リオは続けた。

「…わざわざ……俺が手をくだす事もないと思ったんだよ…」

リオは体の震えを必死に堪えて話し続ける。

「…王子が殺されたってよりも…病気かなんかで死んだって方が俺達の事も表に出ないだろうし…」

黒服の女が高笑いと共に言った。

「あははっ…何を言うかと思えば…そんな事で納得出来ると思うの?」

リオは俯いた。

「……………」

そんなリオに黒服の女が言った。

「さようなら、裏切り者のリオくん♪」

リオは肩を震わせ、やがて大きく笑った。

「あはははははは」

黒服の二人は驚いた。

「なんだ?…気でもふれたか…」

男はその言葉と共に周りを見渡し、異変に気付く。

「王子と…女が…いない…?!」
V905SH
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[82] By no-a
09-01 22:03

「……っ!!」

リオは息をのんだ。
気がつけばリオの首にはヒンヤリと冷たいものがあてられている。男の手に握られている銃だ。

「自分の任務を忘れたか?リオ。今、お前がとっている行動はうちの組織に反する行為だ。」

深く被った黒い帽子の中から鋭く光る男の瞳がリオを捕らえた。

「…っ、それは…!!」

「これは組織への裏切りと理解しても良いのかしら?」

男の後ろから出てきた黒い服を着た女がリオの言葉を遮った。
2人が着ている黒服についている紋章にリオは見覚えがある。
あれはリオが所属している暗殺組織の紋章。この紋章がこんなにも恐ろしく見えたことが、かつてあっただろうか。

「…っ違、これには理由が…」

「どんな理由があろうと、任務を速やかにこなすのが私達の役目でしょ…リオくん?」

リオの言葉を遮り、女は顔をリオに近付けた。その表情は美しく妖艶に笑っている。
リオが言葉を失うと男が静かに煙草の煙を吐き出した。

「……例え、今回の件の黒幕がその王子の父親、いや。この国の王だとしてもな。」
P906i
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[81] By 蛮勇
09-01 21:28
「…‥」

シリウス?

どうしたんだろう?さっきからやけに忙しなく、周りを気にしているように見える… 。
どうかしたのか、と聞こうとしたその時、 意識が向いていなければおよそ聞こえなかったであろう細い声が、耳に届いた。


『そのままの状態で訊いてください‥。誰か、 いや1人じゃない… 恐らく2人以上、私たち以外にこの家屋にいます』

『憲兵‥、 かな?』耳を澄ませると確かに、
古い床板だからか遠くから ギィ、と小さく床の軋む音を感じる。

『いいえ、 王子捜索に派遣される憲兵の数は、国民には極秘捕虜の段階で掴んでいる報せでも 確か、総員300人超。――

『王子の失踪から9日、そろそろ多少目立つ増員をしてもおかしくないし、
隊に分けても 最低10人ずつだって聞いているしな』
仮にも情報屋としての知識を拾い出す。

様子見としても 外観どおり、広いこの屋内での捜索は、少人数では行わないハズだ… 。


バン ッ!!
寝室のドアがかなり荒々しく 開かれる。

王子とシリウスを 背後に護る形で、俺は身構える。


“やはり、お前に殺しは熟せなかったな、 リオ・レイサン”
嗅ぎ慣れたタバコの匂い。

その男の身なりと、手に

握る銃身に見覚えがあった…。



831P
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[80] By 相良
09-01 16:28
リオは街に行くために部屋を出ていこうとしたが、王子に止められた。

「…行っ…ては…いけない…リオ…」

リオは振り向き、少し強い口調で王子に向かって言った。

「…っ…どうして!?俺は…義兄さんの…ために…」

王子は微笑んで言った。

「あり…が…とう……リ…オ…でも…この事…が民…に知れ……れば…民…は…何より……国に…不…信感…を…抱く…だろ…う……また……新たな…争い…を生む…かも…知…れ…ない」

だんだん弱っていく王子を腕に抱きながらシリウスは目を瞑り、静かに聞いていた。

リオはそんな二人の言動を見て体中の力が抜けた。
V905SH
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[79] By 霧亜
08-30 20:25
「なら尚更、俺は君を殺せないよ、王子。
俺は、義理とはいえ義兄さんを殺すつもりはないよ。
殺せないよ…」
「っ…」
『リオ……っ』

「なら…そうやって本当の事を街の皆に話さなきゃ!!!
街の奴らは勘違いしてる!!!」
912SH
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[78] By 相良
08-28 11:28
「…え…?」

リオは一度絶句した。
が、シリウスのその容姿からすぐに理解できた。

「じゃぁ…君の容姿が王女に似てるのも、そのためなんだね?」

シリウスは涙を静かに流しながら口を開いた。

『はい。私とあの子は、双子ですから…』

リオは驚いた。

「!?…でも、君は王族の中にはいなかったんじゃ…」

シリウスはそのままの体制で答えた。

『私達の国では、双子は忌み子とされていたので私は隠されて育ちました。ずっと、お城の最上階の部屋に…そこから…出る事を許されませんでした』

シリウスは続けた。

『だけど、王子やあの子だけは…私を気にかけ、会いにきてくれていました…私は王子とあの子に救われて生きてきたのです……』

リオはもうすっかり王子への殺意はなくなっていた。
V905SH
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[77] By 蛮勇
08-28 06:48
「 泣か、ないデくれ、リオ…僕がシたのは所詮この国の政治の裏側で、
僕の原初にして唯一の存在意義だった、“影武者”に尽くした ダけなのだから 、、
歴史の影として、消え――」

ドサッ。
王子はついにその場に倒れ込んでしまった。
俺がそうするより速く、シリウスが王子の元へと駆け寄る。

俺も遅れて、震える王子の手を握り締める。
「“絶対の調和”とハ、この国の王族た ちの血に限り宿ル高潔な力で、
代々 治世を執行するべきだと親血でニン可された時点で、ようやく次の世代へと相続される程の、代物なんだ…」

〜冷たい ‥。

握っていた 汗ばむ手も、
青ざめていく顔 からも、段々血の気が失われていた。

「デスが、現国王は自身の煩う大病のせいで躍起になられ、相続を一刻も早くと急いておられるのです。 つまり、――」

その犠牲者が王女だったわけ、か…

これだけ分かっているんだ。王子たちも本当は殺すつもりなんか、きっと…。



「最期まで、生かす術は考えました」
その時、初めてシリウスの涙を見た…

「あの娘とワタシは本当の姉妹なんですから」


831P
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[76] By 相良
08-28 00:46
リオはしばらく言葉を発する事が出来なかった。

「………じ…じゃぁ…王子が…妹を…殺したのって……」

シリウスが静かに答えた。

『…はい、妹君をこの力から守るためです。生きたまま、妹君がこの力を得たら…妹君は内側から壊れていたでしょうから……』

リオは目を丸くした。

「…そ…んな……」

そんなリオにシリウスはとても高貴な剣を差し出して言った。

『…この剣で私ごと、王子を貫いて下さい』

リオは小さく首を横に振った。

「そんなの出来ないよ…!そんな話…聞いちゃったら……出来る訳…」
(心・兄さんて…呼びたいのに…口が…言う事をきかない…)

リオの目から、また大粒の涙が零れた…。

王子は寂しそうに微笑んでリオを見ていた。
V905SH
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[75] By 蛮勇
08-27 23:56
「“王族の力”って、
何のことだと思いますか? リオ。」
涙を拭って俺の後ろに控えていた彼女に向き直る。

?シリウスはこの事態に何を言っているんだ‥?
「おそらく、民を統べる者としての“富”やら“名誉”のようなもの だと自己完結しているのかと」

「…違うのか ?」

王子を見やると、依然顔を押さえて嗚咽を洩らしている。

「ええ 、王子が影武者としてまで監視し続けた代物は、そんな俗輩の貪り、求める 憧れや、或いは生きる糧といったようなものなどでも ありません。 それは――

「僕が 死ヲ望まなくて(臨まなくて) 済む、愛しくて、忌々しいチカラ…

「“絶対の調和”サ」



シリウスの言葉を継いで、そう言い放った 王子の顔には包帯は巻かれておらず、俺と同じように涙した軌跡がハッキリ残っていた。
あるべき感情の出口は、確かにそこにあったが、それは 俺の知る王子の顔でなかった… 王子の顔だけでは、 なかったんだ。

王女に 、
見慣れた国民‥
憲兵 に

…‥! 〜俺。

グチャグチャに散りばめられたパズルのピースのような沢山の場面を、パレットにありったけの色の絵の具を混ぜ合わせたような、

他人が折り重なっ た存在に成り果てた王子がそこにいた…。



「こレでも、ケイベツせずに 兄ト呼んでクレる 怪?」
831P
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[74] By 霧亜
08-26 22:28
「なに、ゆって…んの…?意味分かんないよ、
なんで俺が、っ王子を殺さなきゃ、いけないん、だ…よ?」

リオはとても混乱していた。
余りにも、それは残酷な話だったから。
「理由、は…?理由が、分かんない…よ」

『これは、王子からの願いでもあります。』
「…………っな!!!!?」

リオは王子の方を振り向いた。

「なあ!!!嘘だろ?嘘だろ殺せなんて!!俺が…アンタを…


義兄さんを、殺せる訳、ないだろ……っ!!!」
「!!!!!」

王子は驚愕した。
初めてリオが、
[にいさん]と、呼んでくれたから。

驚きと共に、包帯から見え隠れしている瞳から涙が溢れた。
リオも、泣いた。

それを、シリウスは切なそうな顔で見守っていた。
912SH
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