吉田群青 短編集


女子高生




頬が 真綿のような部分に 触れた
開ききったページの二行目辺り
いけないとは思いつつも
つい唾液を垂らしてしまう
チャイムはいつも
放課後に美しく鳴る

帰り道に土手を歩く
制服がごわごわと翻る
はるか向こうから走ってくる野球部
ゲイの部員がいるらしいけど
私にはどの人も
精悍なおとこのひと に見えた
すれ違うとき せっけんの匂いがした

鎖で封鎖されている裏門があった
砂利だらけのそこの前には
少し性が乱れた部室が並んでいた
誰が誰と とか
そういう生臭い会話ばかり聞こえた 毎日
私はそこを通れずに
漫画研究部の部室で
軽いメンソールをくわえて
マージャンばかり打っていた
でも未だにルールは知らない

授業中に窓を開けると
なぜだかいつも哀しい匂いがした
新築の校舎はいつもしいんとして
たまに体育館から笛の音がした

壊れている自販機を
思い切り蹴ると
いちごみるくが五個も六個も落ちてくる
修理されるまで毎日やった
でも本当はそんなに
いちごみるくは好きではなかった
購買のめろんぱんも
みちみちしていて好きではなかった

真綿のような教科書を
いつも枕の高さにして広げる
マニキュアを塗った爪
てらてらした「こーらるぴんく」の
それだけは生々しくて好きだった





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