吉田群青 短編集


花と植物と共にある生活は美しいか



朝おきると
リラの花が咲いていた
どこに咲いたのかというと
わたしの指先にである
リラ
別名ライラック
水はけのよいところに育つというが
わたしの指先は水はけがいいのだろうか
においをかぎながら
皿洗いをする

昼間外出すると
友人に遭遇した
斑入りのチューリップが
頭皮から咲いていた
なかなか見事だねえ
斑入りのチューリップの花言葉は
「美しい瞳」だそうだよ
教えると
ほほう
と呟いて美しい瞳をしばたたかせた
そのまま別れたので
チューリップをどうしたのかは知らない
誰かにあげたのかもしれない

夜に道路で
しいの実を数粒拾ったので食べながら帰る
ほの甘い
しいの実は無気力に効くというがどうだろう
ネオン街で客引きをしているフィリピン人が
非常に無気力に見えたので
持っていたしいの実を全部あげた
フィリピン人は
アリガト と言ってそれをブラジャーの中にしまった
ちらっと見えたそれは頑丈な金庫みたいに見えた
そういう使い方もあるのか
でもわたしは胸がちいさいので
ブラジャーの中に何かしまっても
両替機みたいに全部おっこってきてしまう

別のフィリピン人が
わたしにも何かくれ
と言うので指先のリラをあげた

これで持ち物は何もなくなったわけだが
大体いつもそうなので
別にどうということもなく家まで歩く

セロファンみたいな月が出ていた




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