吉田群青 短編集
ヒグラシ
いい夢を見て眼を覚ました
わるい夢ならよかったのに
わるい夢なら眼が覚めたとき
安心するのに
いい夢は
覚めると絶望する
しかも深夜だ
心細くなったので
布団に横たわったまま
うたをうたった
絶望と希望のうた
それは天まで届いて
星をも溶かしてしまいそうな
うたいながら電話を取り出して
片っ端からコールしたが
もちろん誰も出ない
寝ているかセックスしているか
それとも何か別のことをしているんだろう
まばたきをして
電話を折りたたんだ
もうだめだと思った
もうだめだと思いながら
眼を閉じた
換気扇がまわっている音がする
きっと世界じゅうには換気扇とわたししか
なくなってしまったんだ
そう思った
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