吉田群青 短編集


ヒグラシ


いい夢を見て眼を覚ました
わるい夢ならよかったのに
わるい夢なら眼が覚めたとき
安心するのに
いい夢は
覚めると絶望する

しかも深夜だ

心細くなったので
布団に横たわったまま
うたをうたった
絶望と希望のうた
それは天まで届いて
星をも溶かしてしまいそうな

うたいながら電話を取り出して
片っ端からコールしたが
もちろん誰も出ない
寝ているかセックスしているか
それとも何か別のことをしているんだろう

まばたきをして
電話を折りたたんだ
もうだめだと思った

もうだめだと思いながら
眼を閉じた

換気扇がまわっている音がする

きっと世界じゅうには換気扇とわたししか
なくなってしまったんだ
そう思った




[編集]
[前ページ][次ページ]
返信する

[戻る]













[掲示板ナビ]
☆無料で作成☆
[HP|ブログ|掲示板]
[簡単着せ替えHP]