吉田群青 短編集


早送りの挙句のたまごかけご飯




燃えるごみを
ごみ捨て場へ持って行こうと
外へ出たら雨であった

透明のビニール傘を差して
そのままぼんやり空を見上げる
水滴の降ってくるさまが見えるのが
大変おもしろい

周囲でくるくると人が渦巻いては離れ
ごみ収拾車が走り
花が咲いては散り
草は手を伸ばし続ける
誰かの声が近くで響いた
途端に遠くまでいき
また戻ってくる


と気付くと冬になっていた

手元のごみを見ると
半年前に捨てた
古くなった鶏卵から
ひよこが孵り 鶏へ育ったらしい
足元をせわしなく走り回っている

傘をつぼめて部屋へ帰った

君は居なくなっていた
その代わり
君の形をした影が
待っている姿のまま壁に染み付いてて
夕飯の上に雪のように埃が積もっている
食べないで待っていたんだね

抱きかかえていた鶏を放したら
君の染みの前で卵を産んだので

ごめんね
と言いながら
埃まみれの米飯に
生卵と醤油をぶっかけて
埃もろとも掻き混ぜて食べた



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