吉田群青 短編集


エッセイ



じっとりと湿ったような深夜
ゴミをふたつ捨てる
ここいらはゴミの出し方がうるさいので
深夜か早朝に音を立てないように
規律正しくゴミ袋を置かなければならない
可愛く並んだゴミ袋
ばかばかしい

ゴミを捨てたら急に暑くなったので
冷蔵庫をあけてその前にしゃがんだ
もういつの間にか夏になるのか
そんなのひどすぎる
まだ何もしてない
友達もできていない

しばらくしてから涼しくなったので
冷蔵庫を閉めて
クッキーを一枚食べた
メールを二通ほど送信してみる
けれど返信はない
当たり前だ
もう夜も明けかけているのだ

そういえば
今日一日発声していない
急におそろしくなった
口が無くなったんじゃないか
勇気を出して
エーデルワイスを独唱

えーでるわーいす
えーでるわーいす
かーわいいは、なーよー
口を大きく開けてなるべく正しい標準語に聞こえるように心がけると
なかなか歌いやめることが出来なくなって
ソプラノで歌いながら皿を洗う
じゃーじゃー水を出しながら鍋まできれいに磨いてしまった

エーデルワイスがどうにか終わる
見えない観客に
エプロンをつまんで礼をする振り

手を拭きながら通販を観る
セルライトは日本人の八割に存在するとか
セルライトがあったって
幸福に暮らしていければ良いではないか
悪態をつくと
上の部屋からドンと足を踏み鳴らす音がした
怒っているようだった


す すいません
もう静かにします




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