吉田群青 短編集


夜、部屋で




部屋を少し掃いてみる

輪ゴムが出てきた
わたしは輪ゴムなんか買ったことが無い

しばし眺めて指にはさんだ


吸いさしの煙草があらわれた
キャスター
未だかつて吸ったことが無い
キャスターを吸っている友達のことを順繰りに思い出す


千切れたネックレスが出てくる
ガーネットだ
首に当てる
似合わない



しばし内田百間を読む

携帯電話のメールチェックを行なう

いつかあらわれるであろう結婚相手について夢想する

たまった古紙を縛る

前に言われた非難を思い出して一時間ほどムラムラする

ホウキを置いて本格的にムラムラする


滅多に言わないことを呟く
超ムカつく


掃き掃除を終えて風呂に湯を溜める

水道水を飲む

煙草を吸う

両親について考える

恋愛について考える

手を洗う

炊飯釜を洗い米を研ぐ

イエーイと言ってみる

炊飯器をセットし
缶コーヒーを買いに行く


缶コーヒーを飲む

たまった湯に入浴剤を入れる

ゴミを袋に入れる

髪が抜けたのでつまみあげると意外に長かった


ため息をつく


風呂に入ろうと服を脱いだあとにバスタオルを忘れたことに気付き裸で取りにゆく

NANAを読む

サンボマスターを聴く



詩を考える

考え付かないので眼を閉じる

眼を閉じたまま

そのまま

童謡をハミングして

少し嗚咽した



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