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 許す俺
© コダ 
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 R指定:無し
 キーワード:浮気
 あらすじ:浮気症の『あいつ』と付き合う『俺』。浮気現場を目撃した『俺』はついにキレて・・・
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むかつく。
あいつ勝手にいなくなりやがって!

どきついネオンが一帯を染める通りを、一人の人間を探しながら歩く。
少なくない数の人間が歩いている中、一人の人間を見付けるのは至難の技だ。
それでも探さずにいられない。

浮気とかぜってー許さねぇ!!

それは自分を未成年のたまり場になっているバーに置き去りにした恋人に向かった言葉だ。

くそー俺が酔い潰れてる間に!!

隣あって座ってはずなのに、気付けば隣の椅子は空になっていた。
店にいたやつに聞けば、女と出てったっていうから一気に酔いがふっとんだ。

あいつ、ほんとにいい加減にしろよ!
何回目だと思ってんだ!

恋人の浮気は今回が初めてではなかった。
毎回浮気の度に別れようと思うのだが、結局ずるずると付き合っている。

今度こそ別れたる!

そう心の中で意気込むと、通りすぎた路地から、女のあえぎ声が聞こえた。
もしやと思って除けば、そこには見知らぬ女を立ちバックで犯す男の姿。
暗くて顔はよく見えないが、女の腰を掴む手の指に填められたごついシルバーの指輪に見覚えがあった。
あいつが気に入って買ったやつだ。

あいつ!

ぶるぶると握った拳が震える。
「おい!こらてめぇ!何してんだ!」
大声で叫べば女が驚いた顔でこっちを見る。
あいつは別に見付かったことに焦るわけでもなく、わめく俺をめんどくさそうに見た。
二人の間に割り込み、女をぞんざいに突き放す。
「俺の男に手だすんじゃねぇ!失せろ!」
セックスの途中半端に放り出された女は顔を真っ赤にして「ホモ野郎!」と悪態をついていった。
ホモで結構だクソが!
「どういうつもりだよ!!」
振り返って、自分のモノをしまっているあいつにどなる。
「ただセックスしてただけだろ、そうわめくんじゃねーよ」
反省の色が見えないばかりか、めんどくさそうに言うあいつに怒りが爆発する。「〜〜〜っ!もういいっ!お前と別れる!」
そう言って踵を返して路地をでる。
たいした距離を歩かないうちにあいつが追い付く。
「お前何怒ってんの?別にこんなの珍しくねぇじゃん」
珍しくないから怒ってんだよ!
いちいち口にするのも嫌になり無視する。
反応を返さない俺にあいつが溜め息をついた。
つきたいのはこっちだっつの!
「わかった、わかった。どうすりゃいいんだよ?」
まるで自分が譲歩します、みたいな態度に腹がたったけどまぁいい。
「浮気すんな」
「はいはい」
返事してるけど、こいつまたすんだろな。
「置き去りにすんな」
「はいはい」
今日のは結構ショックでかかった。
「もっと俺を大事にしろ」
「はいはい」
それから…
「好きって言え」
こいつにまだ好きって言われたことがなかった。
「やだ」
「なんで!」
「俺ホモじゃねぇもん」
いっつもこれだ、一番欲しい言葉をくれない。
だから不安になる。
「もういいっ」
歩く早さを速めれば、あいつも同じく早くしてきて、俺の右手を握った。
「ったく、めんどくせーなーお前は」
呆れた声にかちんときたが、あいつが握った俺の手の指の間に、自分の指を滑り込ませて握ってきたから口をつぐんだ。
「…いーのかよ、こんなとこで手繋いで。ホモだと思われんぞ」
「じゃあ離す?」
「やだ」
「あっそ」
別れる気満々だったのにこういうことされると許してしまう自分が情けなかった。
結局欲しい言葉はもらえなかったけど、まぁいいか
こうやって俺はついついこいつを許してしまう。


手を握りかえせば、俺の中指にはめられた俺には不釣りあいなシルバーのごつい指輪が、あいつの指輪とこすれてかちりと音をたてた。



END







2007/04/02
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