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 会いたい
© のっち 
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 R指定:無し
 キーワード:別れ・旅立ち・遠距離恋愛・電話
 あらすじ:恋人同士の桐人と時宗は高校卒業後別々の道を歩き始めた…。本サイトのショートノベルに出した二人のお話。拍手用に書いたのをピックアップしてきました。
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「よ、トキ。大学どうだ?」

トキに久しぶりにかけた電話、大丈夫、俺はちゃんと笑えてる。
学校も卒業して、不良チームも抜けて、俺は地元の…オヤジがやってる木工所に勤めてる。
最初は手伝う気なんかなかったんだけどさ。
アニキは大手のIT企業になんか就職しちまったから。
…ここまで育ててもらったし。
最近痩せてきたオヤジのことも心配だったから、そうした。

それを親父に言ったら「見くびるな」って怒られたけど嬉しそうだった。



『大丈夫か?』


電話の向こうのトキの声。


…あー…お前、今どんな顔してる?

「なんで?元気だよ、お前こそ大丈夫かよ」

天下の進学校に進みやがって。
お前が頭いいのしってたけど。

ずっと一緒だった。

ずっと一緒にいれるって、思ってたわけじゃない。

だから毎日楽しく大事に過ごしてきた。


だけど。



『休みになったら行くから一日あけとけよ。


 会いたい』



…ああ畜生なんでお前はそんなはっきりいえるんだ!!

「…考えとく」

『オヤジさんに許可とったから』
「は?」
『俺、オヤジさんにチェス教えてたの覚えてるか?お前。何気にメルトモなんだぞ、俺等』

「はぁ!?」

『お前よりオヤジさんのがマメだぞ、メール』


………ライバルは親父か!?
メール…
確かにあんま送ってない
…だって言いたい言葉は

「…会いたい」

会いたい会いたい
声が聞きたい
手を伸ばして触れる距離に行きたい
その頬に触れて撫でて抱きしめて

大事だって囁いて

そんな風にしたい



垂れ流れる「願望」が文字になってしまいそうで。

頑張ってるお前、夢を見つけたお前を引き戻したいなんていいたくないじゃないか。

俺だって、まぁ、手身近だけど仕事たのしい、って思えるようになってきたし、頑張りたいし。


『頭わりーんだから悩むな、バカ。

 絶対いいほうに転ばねぇ、バカが悩むと』

「バカバカ言うな馬鹿!」

呆れた声音に思わず昔みたいに食って掛かる。

『不安になんだよ、俺だって。
だったらせめて、留守電にでいいから一声いれとけ。

 …愛してる、桐人』


反則だろ、そんなの。
ああちくしょ、声でねぇ、アホ時宗。

「…おれも」

やっと出たのはその言葉。
もうなんかどうにもならなくてそのまま電話を切った。

一緒にいたんだ、ずっと。
今離れちまったけど。



一言、そう一言で安心するときってあるんだよな。

なぁ、時宗。

俺も会いたいよー………


END







2007/05/24
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