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それはきっと、確かな予感
R指定:無し
キーワード:甲子園・野球・同級生・約束
あらすじ:同級生の野球部同士。。
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「甲斐…甲子園行けたら俺と付き合わないか?」
甲斐がボール磨きをしようと、タオルとボール片手にベンチへ座ったところだった。
最後まで居残り練習をしていた祐貴が目の前に立ち、甲斐へ真剣な表情を向ける。
甲斐はぽかんとしていたが、練習で汚れたボールを磨き始めた。
「やれよ。これ一人じゃ朝になる」
告白が無視されたとなっては黙ってもいられず、祐貴は逃がさないように甲斐の隣へ座った。
「返事…」
「甲子園出場なんて名門校なんだから当たり前。俺はそんな安い男じゃないからな」
「…へ?」
甲斐の言葉を鵜呑みにはできず、祐貴はタオルを取ろうとした手を止めた。
祐貴は男同士で何言ってんの?とか、男同士で気持ち悪いとかいう答えを考えていたため、拍子抜けしてしまう。
「優勝」
「……マジ?」
「マジ」
「したら付き合ってくれるのか?」
沈黙。
甲斐のボールを磨く音だけが聞こえる。
祐貴は返答を待った。
何故一人だけ居残りをしていたのか。
何故いつもなら片付けを最後までやる部員全員が、何かしら理由をつけて先に帰ったのか。
すべて祐貴の差し金だった。
応援する者たちが祐貴の背中を後押ししていた。
「付き合うなんてちゃっちぃこと言うなよ。日本一のご褒美だ。一生想い続けてやるよ」
にっと笑って甲斐は祐貴の髪をくしゃっと撫でた。
甲斐だって思惑などとうに知っている。
祐貴の異常な猫可愛がり。
よほど鈍くもなければわかるものだ。
「甲斐…」
「できればの話だけどな」
「負けない」
「はいはい」
甲斐は手を離し、意気込む祐貴を軽くあしらってボールに視線を戻した。
体が弱いことでナインにはなれなかったが、マネージャーとしてチームを盛り上げている甲斐は、部のアイドル的存在だ。
肩まである薄茶の髪を一つに結び、中性の顔立ち。
校内でもはかなげで、生に希薄なところに誰もが引かれていた。
祐貴は声音には興味がなさそうだが、弾んでいる甲斐にくすっと笑みを零した。
県大会決勝。
「甲斐は?」
マネージャーは球場集合なために、試合前になってもベンチにいない甲斐に祐貴は焦りを感じていた。
まだ七月の後半だからと言っても暑さは本物だ。
暑さに弱い甲斐が途中で倒れているのではないかと、祐貴は時計をちらちらと確認する。
よくない光景ばかりが頭に浮かんでは消えていく。
苛立ちと焦燥感。
とてもではないが冷静ではいられない。
「長谷川、甲斐は少し遅れるそうだ。来てもスタンドからの応援になるからここには来ない。集中しろ」
「…何でもないんですね?」
「もちろんだ」
祐貴は監督からの言葉に納得しがたい様子で円陣へ向かった。
昨夜甲斐から渡されたお守りを握り締める。
一人一人に甲斐は言葉を贈っていた。
祐貴には優勝の文字が。
県大会の優勝ではなく甲子園での優勝だ。
二人の願いであるそれを、ユニフォームのポケットへしまい込んだ。
熱い戦いが始まる。
2007/08/10
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