返信する

 金色の世界
© ハオ 
作者のサイト 
 R指定:---
 キーワード:双子 ほのぼの 秋
 あらすじ:秋の夕暮れ、帰路の途中の小さな幸せ。
▼一番下へ飛ぶ


【金色の世界】


 黄昏迫る帰り道。低くなった太陽が、少し先を歩く美隼の影を長く伸ばす。

「なぁ、美隼ぁ。どこ行くんだよ?」

 家に帰るはずの俺と美隼。なのに美隼は家とは違う方向へと歩いてく。

「いいから、来いって」

 そう言って、美隼はずんずん歩いてく。馴染みのないその道は、何だか違う世界に繋がっているような錯覚を起こさせる。


 ……ホント、どこ行く気だよ?


 前を行く美隼の先では一日の役目を終えた太陽が、最後の光を辺りに振りまいている。


 金色の世界。


 空も、木も、家も、道も。街の全てが金一色。



 金色の光に向かって歩く美隼を追いながら、ふと、甘い香りに気がついた。

「…キンモクセイ?」

 俺がそう呟くと、美隼は歩みを止めた。

 金色の世界で振り向く美隼。その姿はこの世の者とは思えないくらいに美しく、幻想的で、俺は思わず息を呑んだ。



 金色の世界に、美隼と俺と…金木犀。



 ふいに美隼が笑顔を見せた。

「ほら、すごいだろ?」

 そう言って、美隼が指差した先。そこには金木犀の大樹があった。堂々とそびえ立っているその木には、可愛らしい金色の小さな花が咲き誇っている。

「…金木犀って…こんなに大きく育つんだ」

 俺の知ってる金木犀は庭先に植えてあるような小さなものだけ。こんなに大きな木になるなんて、俺は全然知らなかった。

「驚いた?」

 美隼がクリクリの目で俺を見つめる。俺が素直に頷くと、美隼は心底嬉しそうな笑みを浮かべた。

「貴隼にも見せたかったんだ、コレ」

 照れくさそうにそう言って、くるりと俺に背を向けた。きっと今、美隼の可愛いほっぺたは、淡いバラ色に染まってるに違いない。



 …こんなの、反則だ。



 俺の頬が熱を帯びていく。



 そうやって可愛く照れちゃう仕草とか。

 美隼が感じた『素敵なコト』を、俺にも教えたいって思ってくれる気持ちとか…。



 その全てが狂おしいほど愛しいよ。



 込み上げてくる愛しさに、頭クラクラ、心はメロメロ。ヤバイです。ここが家の近所の路上でなければ、今すぐ美隼を抱きしめたいとか思ってます。



「…なぁ、みぃちゃん」

 背を向けている美隼を呼ぶと、美隼は顔だけ少しこちらに向けた。

「……なんだよ? 貴隼」

 ぶっきらぼうにそう言う美隼。照れ隠しなのが丸見えで、これまた非常に愛らしい。

 そんな美隼に俺は最上級の笑顔を向ける。心の底から湧き上がる愛しさも、喜びも、全部笑顔に詰め込んで。


 それから、


 気持ちを込めて言葉を紡ぐ。


 伝えたい気持ちは山ほどあるけど、今はこの一言に想いを託す。

 大好きな美隼にこの胸いっぱいの愛を込めて


「ありがとう」




 金色に輝く世界の中で、



美隼の頬が真っ赤に染まった。




Fin...







2007/09/16
▲ 始めに戻る

作者のサイト
編集

 B A C K 



[掲示板ナビ]
☆無料で作成☆
[HP|ブログ|掲示板]
[簡単着せ替えHP]