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 知らされる前に
© 隠紫 
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 R指定:無し
 キーワード:音信不通
 あらすじ:音信不通。。そのままで笑
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ムカつく…。
俺はアイツのなんなんだっつーの!

原因はある日、突然始まったシカト。
初めは忙しいヤツだから仕事だろうと納得した。
でもそれが何日、何週間、何ヵ月続いたらどう思う?

俺だってバカじゃない。
一方的に連絡をとって無視されたり、電源を切られたことだってある。
ならメールならどうかと試しもした。

それも無駄な足掻き。
返事一通返ってこなかった。
告白したのはアイツなのに…俺をこんなに好きにさせたのはお前なのにっ!

「なっちゃんどないしたん?浮かない顔しとると、幸せも逃げてまうで?」

怒りのままに東京の大学から実家に帰りため息ばかりの俺に、従兄の征二が声をかけてきた。
窓から外を眺め時々空を見上げると、やるせない想いに不満はぶつける場所を知らない。

「あかん…このままやと死んでまうなぁ〜。死ぬ前に逢いたいヤツいんやろ?下見てみ?」

征二の指先を追って細い路地にある家の真前に立つ男に、驚きで目は見開いていく。
俺を追い掛けて来てくれたんだろうかという喜びと、今更何しに来たんだよという想いに、気持ちは二手に分かれていった。

突然鳴り響く携帯の着信音。
出たくない。
出たくないのに手が伸びていく。
今まで無下にされてきただろうが、好きな男からの電話だから、恋人の電話だから拒否りたくはない。

あれ?
そしたらなんでアイツは俺のを何度も何度も捨てられたんだ?

「…愛されてなかったんじゃ」

そんなん片思いでしかないじゃん…。
虚しさから手は力なく床へと落ちた。

だってどうして出ることができる?
別れ話なんて…こっちから切り出してやる!

勢い良く立ち上がり、征二を余所に部屋を飛び出した。
ドタバタと今にも転げ落ちそうな程慌ただしく階段を下り、玄関の扉を蹴飛ばす。

「京介!てめぇどの面下げて俺の前現われてんだよっ!この数か月どうしてるかなんて心配してたと思うなよ?こっちは切れてんだよっ!」
「5ヵ月と25日」
「は?」

言われている日数がよくわからず、目が点になってしまった。
煙草の煙を吐く姿はどこに出しても構わないほど格好良い。
だがその日数分だけ放置されていたのだと思うと、数えるほど余裕があったのだと俺の心を逆撫でする。

「なんで…なんでそんな暇があったんなら連絡一つ取れないんだよ…俺がどんだけ…」

俯き言葉が下へと落ちて声にならなかった。
俺の前では決して吸わなかった煙草。

『癌なんかで先立たれたくないから』

そう言っていつもベランダで吸っていた京介に、後ろから抱き締めるのが俺の特権。
もう死んだってどうでもいいんだ…。

「言いたいことはそれだけ?」

視線も上げず放たれる京介の冷たい声音は、体をぞくっと震わす。
放置されて怒りたいのはこっちだ。
何でこんなに偉そうなんだよっ…。
俺が何した…俺が何したってんだよっ…!!

「別れる…京介と付き合ってるの、キツイ…」

もう少しいたら泣いていただろうというところで、頭にふわっとした温もりを感じた。
大きい手。
いつも甘やかしてくれる優しい感触は、こんな時になっても忘れず心の奥底を満たしてくれる。

ささくれた脆い自分。
痛みでひび割れた心。
いつだって治してくれるのは京介だ。

「俺はお前と離れたくない。それでも嫌?」
「どの口が言ってんだよ…」
「この口が言ってんの」

顔を上げて反論に出ると、予想以上に近かった京介の顔が降りてきた。
隙間を許さないほどの口付け。
早々に入り込む舌が、乱暴に口内を荒らしていく。
芯が熱くなり自然と絡ませて応えていた。

裏切る体に叱咤し京介の胸を力の限り押し戻すが、今度は力強く抱き締められる。
京介の本当の気持ちは見えないけど、嬉しい誤算だ。

「蹴をつけてきた。時間かかったけど、隣にいてほしいのはお前だけだから」
「誰と?」
「婚約者」
「誰それ」

びっくりして飲み込んでしまった涙が喉を通過する。
まずは整理したかった。
自分の身に何が起こっているのか。
嫌がらせの数々が脳裏を過る。
頬を撫でられる親指に、上げさせられた視線の先には京介がいた。

「まだ別れたい?」

二三度首を横へ振って否定した。
本心であるはずがない。

「なら今から引っ越しな。愛する者同士は一緒に住むんだ。世界の常識」
「何が常識だよ」

京介の笑みに俺は返事をしないながらも、満面の笑みで答えた。


後日談。
連絡の取れなかった期間、京介は携帯を取り上げられていたらしい。
何でも説教部屋で軟禁状態だったとか。
それ聞いたらなんか俺って心狭いし幼稚だなぁ〜とか染々思ったりもしてさ。

でも京介が金持ちなんて初耳。
世界が違うとか思ったら、不貞腐れた顔見られて耳打ちされた。

「これからは…」


“二人だけの世界だ”てね。



作者初の第三者以外の作品です。
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2007/12/06
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