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 目のくらむような空の下。
© Lily 
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 R指定:無し
 キーワード:高校(学生)/青春/キス/友達以上恋人未満
 あらすじ:――そんな爽やかな時だというのに、俺達は何をしているんだろう?
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遠くから運動部の掛け声が聞こえていた。空は快晴、それを喜ぶように女の子達の可愛い声が風に乗ってやってくる。そんな爽やかな時だというのに、俺達は何をしているんだろう?

唇が、離れる。
「………」
お互い、言葉もなく。校庭の、人通りの少ない保健室の前で座りながら抱き合っている。…何故だ?
半ば衝動的だったのかもしれない。顔が近かったんだ、俺の髪にゴミがついてる、とか言って正樹が近付いた。それだけだ。
「何、これ」
「キス」
「いや、んな事分かってるよ。なんでこんな事したのかって聞いてんの」
真っ直ぐに見据えるブルーに光を受けて少し赤茶けたくせっ毛。全てが俺を追い詰める。吐きそうに腹のあたりが痛い。
「…わからん」
「お前な、俺が女だったら殴られてるぞ」

――カキンッ

ヒットの音がして見上げると、小さな白い穴が青にぽっかりと開いて、二次関数のように舞った。俺達はそれを見て、なんとなく、再びキスをした。
「ん、」
くぐもった声がする。その、友人の初めて聞く声に腹はまた痛くなって、そのまま校舎の壁に押し付けた。先程したような、触れるだけのキスではない――まるで恋人同士のような、更には、長年会っていなかった恋人同士が偶然出会い、歓喜のキスをしているかのようだ。そこには爽やかさもなにもない。唾液の独特な臭いとか、唇でどこまで気持ち良くなれるのかとか、そんな欲だらけだ。
「は、くるし…っ」
「もう一回、」
「ぅ…んっ!」
下唇を柔らかく甘噛み。そして舌先で正樹の唇の形をなぞった。すると、正樹はピクンと身体を揺らして、俺のネクタイを強く引っ張った。ぐい、と正樹の顎を上げて舌を侵入させる。熱い。
奥にいくと正樹の舌が控え目に小さくなっていたので、少し吸って油断したところを絡めとる。舌先で正樹の舌の腹を愛撫する、すると控え目だった正樹の舌が動き出した。俺の舌は完全に正樹に取られてしまった。口をすぼめて何度も俺の下を唇で擦る姿はまるでオーラルセックスのようで、酷く興奮した。
暫く、そのような熱いキスをした後に、一度目にしたキスのような優しいキスを注いだ。唇同士を楽しむような、ふわふわとした感触を味わってから頬に手を添えて目蓋や頬、耳にキスを降らす。
「……まさ、き」
「うん?」


好き?本当に?


「…や、なんでも、ない」
「うん」


言えない。
俺の根性無し。


「ホントに、俺が女だったらお前殴ってたね」
正樹は立ち上がって言う。俺は情けなく壁に寄り掛かり、情けなく足を放りだしていた。
「だけど、まぁ、これで許してやる」

影。
唇に触れる。
チュ、という軽快な音だ。

「俺が男でよかったな?」
チャイムが鳴ると同時に正樹は校舎の中へ消えた。俺は立つことも出来ず、次はサボりだな、と溜息を吐いた。片手には空の弁当。そして、爽やかなブルーを見上げる。


綺麗だな。

爽やかな風を受けて、俺は目を閉じた。



END



(伸ばした腕は、ただ、空を切った。)









2007/01/18
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