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 凍える夜にふたり
© みぃこ 
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そういえば、今夜は今年一番の冷え込みだった。あたりまえだが雪山は寒い。隣の彼は既に耳を真っ赤にしていた。僕もきっと、そうなんだろう。

「寒い」
「そうだね」
「何か、あたたかいもののことを考えよう」

僕は瞳を閉じて思い起こす

「去年のクリスマス、母さんが作ってくれたポットパイ。」
「それはあったかいなぁ」
「そんでもって、おいしかった。ホワイトソースに鶏肉にブロッコリーに…」

うわぁ、おまえのおかげで腹まで減ってきちまった、と彼は笑った。


大の字に寝そべって見る星空は美しい。雪が音を吸い取るためか、とにかく静かだ。辺りは雪明かりに照されて薄明かるい。神秘的な雰囲気だ。

酷かった奥歯のガチガチもあまりの寒さに止まってしまった。なんだかふわふわとした気分だ。そろそろなのかもしれない。

しばらくの沈黙の後、彼が喋り出した。

「掲示板で知り合って1週間、実際会ってまだ1日も経ってないわけだけど、」

「うん」

「俺にはわかる。おまえ、きっといいやつだよ。」

「僕も、おまえはいいやつだと思う。死ぬの、もったいないぐらい」

「だよなぁ。でも残念。俺、もう疲れちまったんだ」

と、天を見つめていた瞳が此方に向いた。

「お前もそうだろ」

―― ああ、そうだ。

細い身体を痣だらけにした君のように明確な理由があるわけじゃない。ただ、僕は疲れてしまった。家族も友達も、みんな僕を弱い心の人間だと軽蔑するだろう。でもそんなことはとどうでもいい。

雪の上に投げ出された僕の手を彼の手が優しく包む。冷えきったはずのそれを何故か温かく感じた。とても穏やかな気持ちだ。こんな終わりは、悪くない。

「お前に会えて良かった。」
「僕もだ。」

さようならは何だか寂しくて言えないよ

「…おやすみ」



僕はゆっくりと目を閉じた。








2008/02/09
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