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只今、読書中
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キーワード:年の差 純愛 甘甘
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「なぁ、どっか出かけようぜ」
暖かい春の日差しが窓から差し込むある日の午後。
俺は読書に夢中になっているなおとさんに少し甘えながらそう言ってみる。
「・・・・・・うん」
だがなおとは少し間を置いて気のない返事……。
さっきからこれの繰り返しなんだ。
読書に夢中になっている時のなおとさんは俺の話なんて全然頭に入ってない。
こんだけ簡単にあしらわれるとさすがにムカついてきたっ。
「ちゃんと返事しろよっ」
俺は我慢の限界だと、なおとさんの本を取り上げて後ろに放り投げるとそう叫んだ。
次の瞬間なおとはバッと立ち上がり俺の顔を見る。
「なっなんだよ……無視するなおとさんが悪いんだろ」
なおとさんの迫力に負けて俺は子供みたいな情けないいいわけをした。
別になおとさんは俺の事をにらんでる訳じゃないのは十分わかってるんだけど、やっぱりあの顔にじっと見つけられたらどうすればいいかわからなくなるんだよ。
「……わかったよ。結城はどこに行きたいの?」
なおとさんは遠くまで飛んでいった本をひらうと、テービルの上に置いた。
「出かける用意してくるからどこに行きたいか考えておいてね」
そういうと自分の部屋に戻っていく。
「なんか俺、ガキみてーじゃん」
なおとさんの大人な対応を見ると急に自分が恥ずかしくなった。
ただ、大人に構ってもらえなくて物にあたってしまうガキみたいだ。
「小学生以下だな俺……」
俺はなんだかいたたまれず部屋を飛び出した。
頭を冷やそう。
最近の俺は正直わがままかもしれない。なおとさんが優しくしてくれるから図に乗っているんだ。
なおとさんならなんでも許してもらえるって頭のどこかで思ってたのかもしれない。
「ほんっとガキみてー俺」
適当に道を歩いてると、ふいに後ろから俺を呼ぶ声がした。
一瞬なおとさんかと思ったけど違った。
「潤!?」
そこにいたのは高校時代によくつるんでいた潤だ。
「やっぱ結城じゃん。お前ここらへん住んでんの?」
潤の横には彼女らしき女性もいた。
「久しぶりだな。まぁ近くっていえば近くかな。お前は彼女とデートか?」
「まあなぁ」
潤は俺に見せつけるように彼女の肩に腕を回して抱き寄せた。
しかし、さっきから気になるけど……
「あっちょっとそこの公園ででも話そうぜー俺ビールでも買ってくっからちょっと待ってろ」
真昼間からビールかよ。
そう思いながらもしかたなく俺は潤の彼女と共にすぐそこにある公園へ向かった。
「酒屋ってぇここから5分位いかないとぉないんですよねぇ」
突然彼女がそういうと意識的にか無意識か俺の腕に体を触れさせて来る。
完璧、意識してなんだろうけど。
さっきから彼女の視線には気付いていた。
明らかに俺に気がありますってアピールしている。
「あぁそうだな。少し時間かかるかもな」
俺は彼女から少しはなれるとベンチに座った。
するとまた彼女は俺のすぐ横に座り堂々と腕を回してくる。
「結城さんってぇすっごくかっこいいですねぇ私ぃタイプかもぉ」
何を言ってるんだ。この女は……
思わず眉間にシワが寄る。
「あんたには潤がいるだろ。そういう軽はずみな事言うと誤解されるぞ」
「でもぉ私ぃ潤より結城さんの方がぁ好きになっちゃったみたい」
彼女の上目遣いにも話し方にもこの回された腕にも嫌悪が走る。
どうしてこうも簡単にこんな事が出来るのだろう。
こういう女性とばかり付き合っていた高校時代を思い出してまた自分にも嫌気がさしてしまう。
「言っとくけど!!」
俺はキミみたいな女は嫌いだから……と言うつもりがグイッと体が何者かによって後ろに引っ張られギュッと抱き締められた。
「!!?」
潤に誤解されたかっと一瞬思ったがすぐにその腕が誰のものかわかった。
この腕は……なおとさんだ。
「君、悪いけどこの子は僕の大事な人だから……ね?」
俺を後ろから抱き締めながらそういうと彼女はぽかんとしながら頬を赤く染めている。
なおとさんの顔を振り返ると俺でもクラクラしてしまいそうな笑みを浮かべていた。
「なっなおとさん!!」
ハッと我に返り、なおとさんが言った言葉の重大さに気付き俺はあわてる。
堂々と俺達は恋人同士ですって言ってるのと同じじゃないかっ。
「帰るよ。結城」
そういうとなおとさんは戸惑う俺の腕を引っ張り歩き出した。
振り返るとまだ彼女は俺達の方を見て言葉も出ない様子だ。
無言のまま俺たちが住むマンションまで帰ってきた。
無言っていうか、俺は何度もなおとさんの名前呼んだりしたんだけどなおとさんが答えてくれなかったんだ。
「……入らないの?」
玄関についても俺が靴をぬがないからなおとさんはやっと口を開いた。
さっきの笑顔も消えて今は無表情だ。
「怒ってるの?」
なんだか本当にガキみたいだけど俺はそう聞いた。
しばらくの沈黙。
俺はドキドキしてまた逃げ出したくなってしまう。
「怒ってるんじゃなくて心配したんだよ。僕が着替えてる間にいなくなるから」
心配……してくれてたんだ。
でもそりゃそうか。急にいなくなるんだから誰でもびっくりするよな。
「ごめん」
俺はなおとさんの顔が見れなくて下を向いた。
「はー」
ため息!!?
うわーやっぱり怒ってるんじゃん!
ビクビクしながらうつむいたままでいると突然抱き締められた。
「へっ??」
ほんとに突然の事で俺は思わず変な声を出してしまう。
「心配して探しにいってみると、君は知らない女の子といちゃいちゃしてるし」
いちゃいちゃって……。
「でもあれはっ」
「わかってるよ」
俺がいいわけをしようとするとなおとさんの言葉にさえぎられてしまった。
抱き締められていた腕が離れ、なおとさんとの間に少し隙間が出来る。
なおとさんの体温が離れてしまうのが少し淋しく感じた。
「もちろんわかってるんだけどね。ただ君が迫られていただけだって」
なおとさんは困ったように笑うとまたため息。
「でもやっぱり君が他の人とあんなに密着してるのは見ていられなかった」
だからあんな風に俺と彼女を引き離したのか……
「って! あんな事言ったら俺達の関係がばれちゃうじゃん!!」
なおとさんのあの言葉を思い出して俺の顔は青くなってるのか赤くなっているのかわからない位あわててしまう。
「だって結城は僕の大事な恋人だから。ちゃんと言っておかないと」
以外にもなおとさんは普通の顔をしてそんな事を言う。
「あの子、俺のダチの彼女なんだけど……」
「友達に男と付き合ってるのがばれちゃうのが心配?」
まぁそりゃ……心配っていうか
あれ?なんでだろ。あんまり嫌じゃないかもしれない。
「本当は君は僕の恋人だって世界中の人に言いたい位だよ。だから手を出すなってね」
そんな愛しそうな目で見つめられたら俺だってそう思っちゃうよ。
なおとさんは俺の恋人だから手を出したらただじゃおかないぞって。
「でもやっぱり怒ってる?大事な友達だった?」
さっきとは一変心配そうな顔になる。
「いや……別にいいよ。もうあんま会わないし。 それになおとさんだったらいいや。 ばれてもOK」
本当にそう思えるんだ。
隠す理由なんてなかった。
「ありがとう。それとごめんね? 僕は本を読んでると他の事が考えられなくなってしまうから、結城には嫌な思いをさせてしまったね」
あっそうか……それが理由で最初怒ってたんだっけ。すっかり忘れてた。
「俺がガキだから勝手に怒ってただけだよ。 あっそうだ俺も本読んでみようかな。いいのある?」
俺も本を読むようになったらなおとさんと一緒にいられるじゃん。
活字って苦手だけど……頑張って読んでみようかな。
「だったら読みやすいのがあるよ」
なおとさんの嬉しそうな顔を見ると俺まで嬉しくなってしまう。
そのまま部屋の中に入ろうとしたときまだ靴をはいたままだった事に気付いて脱ごうとするとなおとさんに止められた。
「でも今日はとりあえず、どこか出かけようか」
やっぱりなおとさんは優しい。
「おうっ。俺行きたい所あるんだよ」
「じゃあ行こうか」
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2008/02/13
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