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シャワー中
R指定:無し
キーワード:年の差 純愛 ホラー びびり
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「うぎゃー」
雷の音とともに叫び声がリビングにこだました。
今、目の前で人が死んでしまった。
恐ろしい悪霊によって呪い殺されたんだっ。
「映画だけどね」
「……だってぇ」
なおとさんの冷静な一言に俺は涙目になりながら答える。
「お願いだから、せめて電気つけてよっ」
俺は立ち上がって、電気のリモコンを手にとろうとすると手を引っ張られてまた、ソファの上に連れ戻されてしまった。
「ホラー映画は暗い所で見ないと面白くないでしょ?」
目の前のテレビでは次々と人が変死していくというのになおとさんの目はわくわくしているようんい輝いている。
ホラー好きの気が知れない。
「絶対おかしいよなおとさん……」
俺はというとさっきからなおとさんの背中から少し顔を覗かせて見ている。
苦手なんだよ。ホラーって。
でもなぜか見てしまうんだ。これってホラーマジック?
「って意味わかんねー」
「何?」
「うっううん。なんでもなってギャー!!」
俺はまたなおとさんの背中に隠れると、人が殺されるシーンが終わるまで画面を見る事ができなかった。
「んーこれはなかなか良作だねぇ」
あれから30分後に映画はクライマックスを迎えた。
「良作?俺はもっと感動するやつが見たいの!!」
「何言ってるの。この映画だってすごく感動したよ?ちゃんと見てないからストーリーがわかってないんだね」
満足。満足といった感じでなおとさんはDVDを棚に直した。
後姿で上機嫌なのがよくわかる。
なんかなおとさんの思考の方がホラーのような気がしてきたよ。
「先にお風呂入っておいで」
なおとさんは振り返るとそう言った。
「えっ風呂?……えっと」
「ん?」
不思議そうな顔で首をかしげている。
「ううん。じゃあ、お先です」
そう言うととぼとぼとバスルームに向かった。
暗いバスルームの電気をつけて、服をぬぐ。
脱いだ服を洗濯機に入れるとバスルームの扉を開けた。
暖かい湯気が体を包む。
「あんなの実際はあるわけないんだし」
俺は自分にそう言い聞かせるように言うとかけ湯をして湯船につかった。
もし、お湯の中から足を引っ張られたら……
「ないないっ」
頭をぶんぶんと左右に振りながら早々に湯船から出るとシャワーのコックをひねる。
シャンプーをポンプから出して勢いよく髪の毛にもみこんだ。
うっ後ろに誰かいる!!?
「なっないないないっ」
そういいながらも俺は怖くて後ろを振り返る事ができなかった。
と、その時ドアの向こうの洗面所からゴウンゴウンという洗濯機が回る音が聞こえた。
えっこんな時間に洗濯?
「なおとさん?」
なおとさんがいるのかと思い、ドアごしに呼びかけてみるけど変事がない。
でも、動く人影は見えている。
おかしいなぁ?と思いながらもそこになおとさんがいるからと思い、俺は安心して髪の毛を洗う事ができた。
「ふー気持ちよかった」
体も洗って、バスルームから出ると、あらかじめ用意してあったバスタオルで体を拭いてスウェットのズボンだけをはいた。
「あれ? 洗濯もう終わったのかな?」
すでに洗濯機は止まっていた。
閉まっている蓋を開けてみると、俺がさっき脱いだTシャツがそのままの状態で残されている。
「え?」
俺は不思議に思って、リビングにいたなおとさんにさっき洗濯をしていたか聞いてみた。
「洗濯?こんな時間にしないよ」
「えっでもさっき、洗濯機動いてたよね?なおとさんだっていたよね?」
「いや。知らないよ」
次の瞬間俺の火照った体からいっきに血の気がひいてしまった。
「もしかしたら幽霊さんかな?」
なおとさんはからかうようにそう言うけど、俺からしたらジョークでもなんでもないよぉ!
その日の夜俺は、布団から顔も足も手も出さずに恐怖におびえながら眠った。
なおとさんには笑われたけど、あれは絶対悪霊の仕業なんだっ。
それからしばらくはなおとさんと一緒に風呂に入らせてもらうようになった。
普段、俺が嫌がるからなおとさんは嬉しそうにしてたけど……。
悪霊よっ!お願いだからどっか行ってくれ〜〜〜。
-END-
2008/02/13
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