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忘れる理由
R指定:---
キーワード:学生/健全短編/ HP18禁
あらすじ:毎日毎日、忘れ物をする須藤が磯辺に借りに来る理由。
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「おっす磯部、ちょいシャーペン貸して」
「……」
教室の扉によりかかるようにして顔を出した須藤に俺は肩をすくめてみせる。
「隣のヤツに借りろよそんくらい」
「国語辞典も貸して欲しかったし。シャーペン、赤いヤツがいいなーそれ貸して」
(なんで赤いシャーペンがあること知ってんだか)
悪びれた様子のない須藤にため息をし、ふでばこを漁ると赤いシャーペンを取り出して、机の奥に押し込んでた国語辞書も須藤に渡す。
「須藤って、毎日何かしら忘れてるよな」
「そんなところが魅力的だってよく言われる」
…ポジティブなヤツだな。
「んじゃ、サンキューな」
ニカッと笑った須藤は4つ離れた教室へと戻って行く。
あいつ、4月にあった合同授業で一緒になったときに消しゴム貸して以来、忘れ物をするたんびに俺に借りにくるんだ。
最初の頃は普通に教科書や辞書だったのに9月になった今じゃ、ああやってシャーペンまで借りにくるようになった。
まぁ…貸したモンはちゃんと返ってくるし、貸さない理由もないし…
そりゃ、毎日毎日…下手したら2・3回借りにくる辺り困ったヤツだなって思うものの、憎めないっていうか。
須藤に貸さなきゃなんないっていう使命感がわいてきたりで、最近じゃこの貸し借りを楽しんでる自分がいる。
須藤も、そう思ってたりすんのかな…?
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あまりにつまらなくてアクビが連発する英語の授業。
眠気を覚ますためになんかねーかなって机の中を漁ったとき、指に触れたのは須藤から返ってきた国語辞典。
今日はやけに返ってくるのが早かった、いつも放課後に返しにくんのに。
辞典を机から出すと何気なくパラパラめくる。
すると少し折り目が付いてたからか、導かれるように開いたそのページを見て、俺は思わず机に突っ伏してしまった。
「? どったのいそっち」
「な、なんでもな…っ」
隣のヤツが心配そうに声をかけてきたけど、俺は突っ伏したまま顔を上げられなかった。
顔が尋常がじゃないぐらい熱くて、駆け足の心臓が口から飛び出してきそうで…
こんな赤面した顔、授業中にさらけ出せるかってんだ!
“す”にある『好き』という単語は鉛筆で何重にも丸く囲われていて、辞書の下にある余白には
『俺が毎日磯辺に借りに来る理由』
て書かれてたんだ。
眠気は一気にフッ飛んだものの、嫌悪感どころかあまりの恥ずかしさに血が沸騰しそうなんですケド…どうしたらいいですか。
end**
2007/01/18
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