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 春、出逢う(学園天獄より)
© しらたま 
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 R指定:無し
 キーワード:不良 高校生
 あらすじ:短編小説集に生息中のふたりです。バカ×ツンデレ
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 別々の中学の頃から喧嘩っ早いので有名だった勇人と祐司が、最初に言葉を交わしたのは高校の入学式だった。とはいえ彼らは、入学式には出席していない。揃いも揃って遅刻したのだ。

 「第〇回〇〇高等学校入学式」という板が校門に立て掛けてあるのを横目で見ながら講堂へと向かう。もうそろそろ終わるであろう式に、さて今更潜入すべきかどうか。祐司は一度立ち止まって考える。このまま講堂に堂々と入れば、明日から間違いなく、「入学式に遅刻したヤツ」として学校中に存在を知られることになるだろう。加えて祐司は、髪をアッシュ系に染めた目立つ身なりをしている。もしかしたら先輩に目を付けられてリンチ、なんてことも無いとは限らない。なにせここは、近所でも有名な知る人ぞ知る不良高だ。
「……ムリ。」
 祐司の背に、悪寒が走った。
 中学時代は散々悪さばかりして、所謂「不良グループ」の頭みたいな存在だった祐司。高校くらいは、真面目とまではいかないまでも、平穏無事に過ごそうと決めていた。敵に回すのは生活指導の教師くらいで十分だ。
 式に出ないと決めれば、あとはもう帰るだけだ。講堂に向かっていた足をくるりと180度回転させて、祐司は元来た方へ向き直った。
 色々と考えごとをしていたせいで背後にまで気が回らなかったのか。目の前には、赤毛の馬鹿でかい男が立っていた。
「あ?何、帰んの?講堂わかんねーからキミについて行こうと思ってたら、急に立ち止まっちまうんだもんなぁ」
「え……うそ、黒川、勇人?」
「お。俺のこと知ってんだ。」
 祐司の前で髪をかきあげているのは間違いなく黒川勇人(クロカワハヤト)、西中の不良グループの頭だ。祐司の周りにも何人か、黒川に喧嘩をふっかけてボロボロに伸されたヤツがいた。
 噂でしか聞いたことがなかった人物を前に、祐司がぼんやり突っ立っていると、不意に赤毛が何か閃いたみたいに手をパンッと打って笑った。
「俺もアンタ知ってるよ。祐司だろ?」
「は?なん…で」
「有名だったから。東中の緑髪の番長はえらい美人だ、つってさ」
「……バカいえ。」
「てかさ、どうすん?入学式」
「お前が行くなら行ってもいい」
「ふ−ん、じゃあ行くべ。一生に一回しかないかんな」


 満開の桜がはらはらと舞い散る下。
 それは、彼らが出逢うにしては、
 笑うくらい出来過ぎたシーン。



※ふたりの別のお話は、サイトにて*







2007/01/18
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