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 好きなんだから
© 流華 
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 R指定:無し
 キーワード:生徒攻め 教師受け 学生
 あらすじ:暑い、夏の駅。ただなにをするでもなくあなたを思う。
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太陽がてかてか光っている。
風はそれなりに吹いているけれど生ぬるくてうれしくない。
売店でかった、苺ミルクもいつのまにかぬるま湯の様になっていておいしいとは言えなかった。

「うわあ・・・あっちいなあ。」

駅の椅子に座って、喉を反らすように空を見上げた。
うっかり太陽を見てしまって目がチカチカする。
一人じたばたとうなってみても、がらんとした駅ではだれも相手をしてくれなかった。

「つまんないのー。」

仕方なしに、こっそりと学校に持ち込んでいた煙草に火をつける。
口に加えてしばらく吸っていたが、妙にまずくなってやめた。


『長谷川!!お前、なにこんなとこで煙草吸ってるんだ!!』


ふいに、耳元で怒鳴り声が聞こえた気がして振り向いた。
だけど、そこに誰かがいるわけもなく。

ー・・・だれかっつーか・・・先生以外がいてもうれしくないんだけどね。

頭の中で、校舎内ですれ違った担任の顔を思い出す。


天然な割に、生徒の行動には敏感で。
人を和ませる天才。
違反をすれば叱りつけるし。
しつこいぐらいに追いかけてくる。

「でも、そこがいいんだよねー。」

そんな教師、うっとおしいと思っていたのに・・・。
いつも、真剣な目で俺の名前を呼ぶセンセー。
大抵の教師なんて、適当にあしらってればいいと思ってたのに。

『長谷川?』

形のいい唇が、俺の名前を呼ぶために動く。
それがどうしようもなく、うれしくなったのはいつからだろう。

それと同時に、センセーが俺を呼ぶとき・・・俺に誰かを重ねていると、気づいたのもいつだろう。
うれしいわけが無い。

センセーが、長谷川と言うたびに・・・俺は吐き気を抑えるのに必死だった。


ー・・・先生は、俺と親父を重ねてるんだ。

親父と先生の関係を知ったのはつい最近。
しかも、先生のほうが俺の親父にべた惚れときた。

『長谷川さん・・・』

やけに色のある目で、親父を呼ぶ。

・・・ときどき、俺も呼ぶ。


正直、落ちるよ。
かなり落ち込みますとも!!

でも、しょうがないじゃん。
これが、今の俺とセンセーの距離。


「大和って・・・呼んでくれないかなー。」

もう一度。空に向かって言ってみたけど。
相変わらず、がらんとした駅ではだれも答えてくれない。
次の電車まで後十分。
その時間を待つのは、ひどく億劫だけど。

彼を自分のものにするためなら時間をかけるのも悪くない気がする。


「俺が好きなんだから、それでいいの。」

そっと、自分に言い聞かせるみたいに呟いてみた。


電車は、まだ来ない。



終わり







2008/05/05
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