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誘拐
R指定:無し
キーワード:兄弟/死/血表現有/悲恋?
あらすじ: ある一つの家から、二人の兄弟の姿が消えた。数ヶ月彼等は、ある放置された山荘で見つかる。二人をさらった誘拐犯は事切れていた。そして、兄も……。生きていたのは、守られるように抱き締められていた一人だけ。 たったひとりだけ。
そんな記事が、数日後ある紙面に載った。
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十流(みつる)は、"ソレ"がもう完全に事切れ、動かぬことを理解すると、ふと思い出し目を閉じた。今までずっと見開いていた目は水気を少々失い、乾きに染みる。上から降りて来た影に雫を呼び寄せられるように、ひとつぶ、ふたつぶ、と涙が零れた。
瞬きと言うアクションをしなかったのは、その数分間だけ、発作の様に闇を恐れたため。瞳を隠すことで、一瞬と言えど訪れる闇が、その刹那が怖かった。視界が闇に染まることで、何も見えなくなる。
(見えなければ、俺を襲う牙から逃げられないだろう?)
意図的に閉じられなかった瞼は、時間が経つにつれ果たすべきアクションを忘れ、暫く眼上に待機したまま放置されていた。
潤いを与えた瞼は役目を終えると、すぐに上に上がる。拓けた視界に喘ぐ様に、細く浅く、息を吐く。
赤い紅い水溜まりが、冷たい床の上に広がっていく。
「桔依羅(きいら)……」
手に持っていたナイフをからんと落とす。
無数に転がるその夥しい数の抜け殻の中から、ろくに動きもしない足を、悲鳴をあげる傷口を、完全に無視し、呻く彼を救わんと駆け寄った。
(実際は床に足を擦るようにして、走れていないことに、その体から零れる、夥しい量の紅に、彼は気付かない)
埋もれる、息も絶え絶えとした愛しい人の体を引き摺り出し、こちらを見てこれ以上無い程目を見開く彼に優しく口付けた。
「桔依羅……怖いものはもう無いから……もう大丈夫……」
鬼は、その愚かしき身を滅ぼした、たった一人の青年を、恐ろしいものを見るように瞳を拓いたまま動かない。
(僕たちを閉じ込める、監禁魔達から逃げるんだ)
「帰ろう……もう俺たちを閉じ込める奴はいないんだよ……」
(アイツらから凶器を奪って、倒してしまおう)
抱き締める体はこちらを抱き締め返し、悲鳴を上げるように嗚咽を漏らすだけでそこから動かない。
(もう怖いのは嫌だよ、帰りたい)
どうして?
(チャンスが来たら、逃げよう……)
「俺なんて何で助けたんだよっ……血が……血が止まらない……! 何でっ……十流!」
何を言っているの。聞こえないよ、桔依羅。
意味不明すいません。
2008/05/24
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