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 うららかな昼下がり
© 反町しん 
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 R指定:無し
 キーワード:学校
 あらすじ:休み時間、学校の屋上でくつろぐカップルのなにげないやりとり。
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うちの学校には「屋上庭園」なるものがある。
屋上と言っても実際は3階部分で、北館と南館の間に設けられたスペースがそれだ。
一応植え込みやテーブルに椅子なんかもあって、生徒がくつろげるようになっている。
場所が場所だけにサボりには使えない屋上だけど…
今日は天気がよかったので、俺達はそこに出て弁当を食べることにした。
「学校にいながら遠足気分だよなー」
「…本当に遠足だったらめんどくせーとか言うくせに」
悪態をつきつつ、実は俺もちょっと楽しい。
休日に遊ぶ時も公園でコンビニのパンを食べたりはするけど、校内で堂々とこんな事ができるのは悪くない。
「はー、気持ちいー」
早々に食べ終わって、オミは植え込みのふちに腰掛けてそのまま仰向けに倒れ込む。
葉っぱがつくとか制服が汚れるとか、俺なら気にするような事には案外無頓着だ。
「トモも来いよ」
呼ばれて同じように植え込みのふちに腰を下ろすと、ブレザーの襟をぐいっと引っ張られた。
「ぅわっ……何すんだよ、汚れるだろっ…!」
「あとではたいとけば大体落ちるって。それより見ろよ、空がすげーきれい」
確かに、秋晴れの空はどこまでも突き抜けるように青くて広かった。
中学の頃は、何度となくこの空を見上げて「オミとつながってるから寂しくない」なんて自分に言い聞かせたんだっけ。我ながら恋する乙女をしていたものだと思う。(今もだけど)
「このまま昼寝しちゃいてー…」
オミは目を閉じてふーっと息を吐き出した。
「いいよ、授業始まったら置いてくから」
「ひでえなあ……」
ちょっと笑って、そのまま目を閉じている。
規則正しい息遣い。もしかして本当に寝てしまうつもりなんだろうか。
俺は身を起こしてオミを覗き込んだ。
「おい、オミ。寝るなよ、マジで」
そういえば、今までこんなにまじまじとオミの顔を見る事ってなかったかもしれない。
オミが目を開けている時は、目が合うのが恥ずかしくてこっちから反らしてしまう事が多いから。
(まつげ、意外と長いんだな…)
ああ、頬にキスされたりした時にくすぐったいのってこれだったんだ。
そんな事を考えていると、オミがうっすら目を開けた。
「昼寝がダメならさ…」
そしてその目をこっちに向ける。
「キスしようか」
その目は優しい弧を描いて。
つい引き寄せられそうになる。でも、ここは。
「ばっ…か、何言ってんだよ。ここじゃ丸見えじゃんか…」
北館からも南館からも、屋上庭園にいる他の生徒達からも。
小さな声で話しているからこの会話は聞こえていないと思うけど、必要以上にくっついていたらやっぱり変に思われる。
バレてもいいってオミは言うけど、俺はもしそうなってオミが他人に変な風に言われるのが嫌だった。
「ね、トモ」
オミは構わずに手を差し出してくる。
俺は反射的に立ち上がって、その手をぴしゃりと叩いた。
「ダメ。絶対ダメ」
「ちぇ」
オミも起き上がって背中の汚れをはたく。俺の背中もはたいてくれた。
そしていつものように肩を組んで、
「じゃ、後でな」
耳元に甘い声で。 太陽の暖かさと相まって、何だか溶けてしまいそうだった。







2010/05/15
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