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 初めて雪の降った日
© まゆき 
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 R指定:無し
 キーワード:幼馴染み/年の差/年下攻×意地っ張り受
 あらすじ:綺麗だけど超強気な大学生の聖と、彼を一途に想うワンコな高校生、守人の日常の一コマ。一話完結シリーズモノ。
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「マジさみー」

聖ちゃんは綺麗な白い手を擦り合わせ、空を仰ぐ。

「つーか雪でも降るんじゃね?」

うん…そうだね。
上の空で返事を返し、不機嫌顔の彼に見惚れる俺。
その細い体故か、聖ちゃんは冬が苦手だ。

色白で黙っていれば儚げにも見えるこの人には、冬が一番似合っていると俺は思うんだけど……。

「俺ので良かったら……着る?」

俺が着ているのはダウンのベスト。
袖はないけど、それでも着ないよりはマシだと思うから。

「……いらね」
「でも、寒いんでしょ?」
「さみーけど、着ない」
「風邪ひくよ?」

うっせーよ、おまえ……睨み付けられ、仕方なく俺は口をつぐんだ。

「なぁ、もりは全然寒くねーの?」

白い息でやっぱり仏頂面して言った聖ちゃんに、思わず笑みが洩れた。

「寒くないよ。俺聖ちゃんといれば、いっつもぽかぽかだもん」
「……やっぱバカの頭ん中は年中春なんだ?」
「うん……聖ちゃんといる時限定でね」
「おまえ、とことんバカ」

いいよバカでも。
そんなバカでも、あなたが傍に置いてくれるなら、俺は幸せなんだ。
呆れてそっぽを向く聖ちゃんも、それはそれで愛しいから。

「―――アレ…?」
「ん?どーかした?」「今……鼻の頭になんか当たった……わっ、マジで雪降り出した」
思いきり嫌そうな聖ちゃんのセリフにつられ空を見上げると、確かに花びらみたいな小さな結晶がハラハラと舞い降り始めた。

「ホントだぁ〜〜初雪を聖ちゃんと見られるなんて、俺すっげぇ幸せ♪」
「……犬みたいな事言ってると、置いてくぞっ」

放っておくと、本当にやり兼ねない有言実行型の聖ちゃんの腕を、俺は慌てて引っ掴んだ。

「なんだよっ!?」
「手……繋ご?寒いでしょ?」

掴んだ腕をゆっくり移動し握り締めた聖ちゃんの手は、ハッとするほど冷たいから、俺はそのままベストのポケットへ自分の手ごと突っ込む。

「……誰かに見られたらどーすんだよ」
「いいよ、気にしない」

他人の目なんか怖くない。
俺が怖いのは、あなたが俺を必要としなくなる、その瞬間。

だからこうして、手を繋ぐんだ。

「……聖ちゃん……絶対逃がさないよ」
「黙れ……バーカ」

視線すら合わせてくれない聖ちゃんの手が、ポケットの中で俺の手を強く握り返してくれた。

―――バーカ……俺だって放してなんかやんないよ。

言葉はないけど、握り返すその手が伝えてくれる。








2007/02/03
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