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 僻み
© 深鈴 
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 キーワード:嫉妬
 あらすじ:教師と生徒という間柄で付き合い始めたある日の出来事。
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「何、浮気者」

今度は『浮気者』かよ。

俺には雅幸って言う、ちゃんとした名前があるんだけどなぁ。

恋人と、喧嘩して一週間。
何故か年下に、馬鹿呼ばわりされている哀れな男。

自分で『哀れな』とかいってちゃ救いようがないけどよ。

学校では、にこやかな笑み浮かべた成績良くない優等生の恋人が、何故か俺の部屋にいた一週間前。

理由わからぬまま『馬鹿』呼ばわりされ、下手に怒らすのも何なんで、静かに従ってたんだけど…。

古典の教師としても、年上の恋人としても情けない状態で、何とかしたいんだが、

「なぁ、あ…」

「喋るな、浮気者」

………愛しい名前を呼ぶ前に、浮気者呼ばわりで俺のナイーブな心をグサリと切り裂くのだ。

浮気した覚えが全くない俺は、ひそかに、いじける。

「なんで浮気者呼ばわりなんだよ…」

不平を呟いた。

今日帰ってきてから、ずっとベッドに俯せになって、占領している愛しい茶髪へ視線を移した。

「………一週間前、中庭で抱きしめてた奴…誰…?」

俺の言葉が聞こえていたのか、言いにくそうに言われた言葉に首を捻る。

「一週間前……中庭…」

抱きしめた?

……………記憶にない。
つか、思い当たらない。

「…俺より可愛い感じだった」

拗ねた恋人ほど可愛いものはない。

つまり、俺に襲われても文句は言えない。

とりあえず、愛しい人へと近付く。

そして、ギシリと軋む音をたててベッドに片足を乗せた。

「な、に…」

身体を仰向けにして、驚きの中にも期待を含んだ瞳を俺に向ける、可愛い可愛い子。

「つまり、その子よりも可愛いがれ、と」

「は…?や、ちが……ぁっ」

「遠慮するなよ」

「してないしっ!!」

否定の言葉を聞き流し、シャツの上から、胸の赤い飾りを弄れば主張するように立ち上がる。

「あ…ッ…、ん…、駄目…」

潤んだ瞳で言われても、説得力無いだろ。

むしろ、煽られたし。

そして、俺達はベッドへとなだれ込んだ。

長い長い夜の始まりだ−−。







2010/06/05
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