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 続・ここは花の指定席、だから
© 虚空塁 
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 R指定:無し
 キーワード:同級生で親友
 あらすじ:一郎視点で花に告白する前の話。一郎は実はこんな奴でした。
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 初めてアイツを見たのは入学式が終わった後のHR。名前だけは教室に入る前に貼り出された紙を見てあらかじめ知っていた。
 名前から可愛らしい女だろうとあたりをつけていたのに、実際に見てみると男だったわけで。
 とりあえず声を掛けたのが全ての始まりだった。


―上田 一郎の場合―

 平凡すぎる名前とは裏腹に、一郎はなんでも出来てしまう子供だった。勉強も運動もなんだって人より平均以上にやれてしまう。
 これで性格も良ければ言うことなしのパーフェクト人間の誕生である。
 しかし世の中そう上手くはいかない。
 一郎はどうしてか、このうえなく性格がひどかった。
 もちろん、それを表に出すなんてヘマはせず、表面的には優等生の皮を何枚もかぶっている。


「ごめん、君のこと全く知らないから付き合うとか考えられない。それに好きな子がいるんだ」

 告白してきた女の子に対して、一郎は申し訳なさそうに答える。相手が涙を流そうが、勝手に走り去ろうが、どうでも良いのだ。興味も関心もない。
 それに見知らぬ相手からいきなり「好きだ」と言われても正直困るというものだ。一体その「好き」にはどれほどの重さがあるというんだろう。
 そんなもの一週間でたち消えてしまいそうじゃないか。

 一郎はそう考えてから親友の花を思い浮かべた。今現在、一郎が想いを寄せている相手である。
 実を言うと花が自分を好きなことには気付いていた。花は分かりやすく、それがすぐに顔に出る。
 いつも呼び出しを受ける一郎を見て、花が一瞬傷付いた顔をするのも。
 嘘をついて図書室で時間を潰しているのも知っていた。
 だからいつ告白してくるだろうかと花の様子をそれとなく見ていたけれど、いっこうに言ってくる気配がなかった。

 一郎は花のふとした仕草を見る度に、その身体を欲望のままに貪ってしまいたいと思うようになっているというのに。
 しかし、優等生の皮が邪魔をする。
 優等生で通っている自分が花を無理矢理、抱くわけにもいかない。頭の中では常に抱いていても、だ。

 ならば一郎から告白すればいいのではないか。
 だが、今まで好きと言われたことはあっても、一度として自分から好きと言ったことのない一郎だ。まずどう言えば良いか分からなかった。
 なんといえば花は一郎の愛を受け取ってくれるだろうか。

 悩むこと数日、一郎は花がいるであろう図書室の扉を開け声を掛けていた。


END







2010/07/04
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