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 ししょうとわたし
© キト 
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 キーワード:師弟関係 年下攻め
 あらすじ:師匠の身の回りの世話も、弟子の仕事というもの。
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 初めて美しいと思った裸は男性だった。白く、真珠のように艶やかで。水色の着物と良く似合う。薄暗く襖に囲まれた部屋には、二人しかいない。私は正座した膝の上に拳を二つ作り、じっと師匠の言葉を待った。


「触ってみるか?」
「へ?!そ、そんな」

 そんな恐れ多いこと。


「そう赤くならなくてもいいだろ。私もお前も女じゃないのだから。」

「はい、」

 女でなくともこれ程までの色気は師匠のどこから出て来るのだろうか。引き締まった体は、女性特有の丸みなのないのに、どこか曲線めいていて、艶やかである。ゴクリ。

 私はゆっくりと師匠の肌に指を這わせた。

「…ふ、……んっ」

 いつもは、凛々しい師匠の口から怪しげな声が漏れる。それに反応して息が荒くなるのを必死で抑えた。

 高鳴る心臓が痛くてたまらない。


「痛い。消毒液はお前の横にあるから、早くしておくれ」
「は、はい、師匠!」


 そう言って背中に小さく咲く花の入れ墨に薬を塗った。






「あの頃のお前はウブだったのにね」
「あの頃などと、比べないで下さい」

 私が静かに言うと、師匠はクツクツと笑った。

「今は私にこんなオイタを働くようになっちゃって」
「オイタですか?これは」

 わざと変な言い回しのするのはこの人の癖に近いと私は思っている。異常なこの世界のトップに立ち続けるためには、どこかしら歪むのかもしれない。


「はーあ。私は可愛かったあの頃のお前が恋しいよ」

 それはそれは。

「師匠、恐れ入りながら今の言葉は聞き捨てならないのですが」
「どうした、何がだ?」

 師匠は肘を着いて私を見つめる。それに合わせて黒髪がゆったりと流れた。


「例え結果として私自身であろうとも、今、貴方の目の前にいる私以外の話をなさるのは心苦しいのです。しかも、想いを馳せるなんて」

 師匠の目がどんどん大きくなる。

「は?…お前がこれ程までの阿呆だったんて」
「そうしたのは師匠ですから」

「黙れ」

 ありったけのシーツを這わせて師匠は顔を埋めた。私は世界一可愛いこの人を離すつもりはなかった。

END







2010/10/18
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