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嫌いじゃないよ[後編]
R指定:有り
キーワード:ヘタレ×ツンデレ/リーマン/年齢差/甘/
あらすじ:「嫌いじゃないよ[前編]」の続きです。
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「お邪魔しまーす」
心底嬉しそうに俺の家へ上がった七五三木を横目にスーツを脱ぎ捨てる。
今日は本当に助かったし…夕飯ぐらいはごちそうしてやらないとな。
「なにか食いたいもんあるか」
「え!安西さんの手作りですか!?」
「出前が良いならそうするぞ」
「い…いえ!安西さんの手料理食べたいです!」
七五三木は笑うと目じりが垂れる。
それが妙に可愛くて、ちょっと赤面している自分がいた。
「安西さん…今日、その…キスして…すみませんでした」
ボロボロになったワイシャツを着替えているところに後ろから声をかけられ、びくりとして振り返ろうとすると長い腕が腹部に回ってくる。
「ちょ…七五三木…っ」
「安西さん…本気なんです俺」
少し身をよじったけど、七五三木の掠れがかった声が震えている気がして身を任せた。
裸体に触れる手が妙に熱っぽくて、この熱を失いたくない衝動に駆られている自分に驚く。
でも…それでも…。
「もう面倒なんだ。30過ぎて恋だの愛だの…くだらない」
「そんな理由で…断るんですか?そんな理由で俺を拒むんですか?」
その声が余りにも真剣で、一瞬たじろぐ。
こいつのこんな声を聞くのは初めてだった。
「………お前だって…なんだってこんなオヤジなんか好きになったんだよ!お前なら容姿も良いし…どうせ女なんて必要以上に寄って来るだろ!?」
七五三木の腕から力いっぱい逃れ、距離をとる。
このままじゃまずい。
このままじゃ俺はこいつに流される。
もう嫌だ…もう愛した人に離れられるのは怖い…。
「……俺…安西さんがバツイチだって知ってました。5年前、奥さんが家から出ていくとき安西さんが後を追って出てきたの見てたんです」
見られ…て…た?
…あの現場を!?
消し去ってしまいたいあの過去を!?
「…なっ…んで今そんな話…」
羞恥に顔を染める俺の手を、またあの熱っぽい腕が掴む。
一瞬後ろに引いたけど、あの瞳を向けられるともうダメで大人しく力を抜いて目を逸らした。
「“あんたみたいな冷たい男大嫌い、どうせあたしのことなんて好きじゃなかったんでしょ?”って叫んだ奥さんに何も言わないで…安西さん、奥さんが乗った浮気相手の車を見ながら言ってたでしょ?
“本気で好きだった”って。そんな風に泣きながら言える人が…冷たい男の筈ありませんよ」
「…………っ」
どうしてお前はそんなに優しいんだよ…。
どうして…どうしてそんなに俺が欲しい言葉をくれるんだよ。
「…あんな風に一途な人が自分を見てくれたら…どんなに冷たくされようと嫌いになんかなれないって…そのときそう思いました」
「………」
「…安西さん…好きです」
「…………………知ってる」
お前のこと、嫌いじゃない。
嫌いじゃないよ…。
「安西さんは…?」
「………」
不等号をつけるなら、嫌いじゃないより好きの方がきっと大きい。
お前は俺の心を乱すのが得意だ。
お前は俺の壁を壊すのが得意だ。
「……安西さん…キスしていい?」
「…イヤ…じゃない」
そんなお前に惚れた俺は、きっとお前に堕ちていくんだ―……。
「……ふっ…ン…」
「安西さん…口押さえないで…声聞かせて?」
「う…るさい…っ…ぁ!」
胸の突起を執拗に弄られ、真っ赤に色づいたそこに熱い舌が這う。
すでに硬くなった自身に手が添えられただけで腰がびくりと跳ねた。
「ご無沙汰でした?もうヌルヌル」
「…だから…うるさ…っ…ひぅっ…」
下着を脱がされ外気に晒された下肢からは先走りが溢れ、七五三木が扱くたびにいやらしく腰が動く。
「……ゃ…っ、あ…っンン…」
あれだけ熱いと感じていた七五三木の手がそれほど熱くないと感じるまでに体は火照り、酒を飲んだ時みたいにドキドキと心臓がうるさく脈打つ。
「………つっ!!……ぁ、はっ…ぅ」
後孔に指を突き入れられ、ビクリとして腰が浮く。
久しぶりのその感覚が慣れなくてシーツをきつく握りしめた。
「…すみません…もしかして痛いですか?」
「へ…き…だっ…ぁ!…っ、しめぎ…そこ…ダメ…イ…ちゃ、からぁっ」
中で動く指は俺が嫌だと言ったとこをばかりを執拗に攻めたて、限界だった俺は呆気なくシーツに欲望を吐き出した。
「…だか…ら…はぁっ…ヤダって言った…のに…」
絶頂の余韻でトロンとた表情で七五三木を見上げると、七五三木は欲情に濡れた瞳で俺を見てズボンの前のチャックを外し自身を出した。
「いれても…良いですか?」
「嫌なんて…いう訳ないだろ…っ」
首の後ろに腕を回しキツく抱きしめ耳元で「早く」と呟きせかすと、ゆっくりと押し倒される。
「…そんなに煽らないでください…優しくできなくなりそうです…」
「…ぁあ!っ…ぁ、あっ…あっ…しめ…ぎ…しめぎ…っ」
よほど余裕がなかったのか挿れてすぐに七五三木は腰を動かし始め、奥を突かれるたびに激しい快感に身を震わせる。
「…名前で呼んで……ヒトシさん…」
熱っぽい声と吐息が耳元にかかり、自身が一層硬度を増していく。
「…シュウ……ぁっ…シュ…シュウ…っ」
快楽に溺れかけた意識の中何度も名前を連呼する。
「は…離れるな…よ…っ、ンンっ…はっ…ぁっ…傍に…ずっといて…っ」
「…っ…煽らないでって…言ったのに…」
中で質量がぐんと増し、直でそれを感じた俺は恥ずかしくて顔を赤らめる。
「愛してます…ヒトシさん…離れませんから…絶対に」
「……んっ…ぅん…っ…好き…俺も…っ…」
二度目の絶頂とともに、俺は意識を手放した。
「………ん…わぁあ!」
目が覚めると目の前に七五三木の顔があって、驚いて大声を出してしまい急いで口を押える。
起き上がろうにもしっかり七五三木に抱きかかえられていて動けなかった。
「…んー……」
大声を出したにも関わらずまだ寝続ける七五三木を見て絶対こいつ寝起き悪いタイプだろうと思った。
体は綺麗に拭かれてパジャマまでしっかり着てある。
よくパジャマ探し出したなこいつ…。
ってお前の方が裸じゃねぇか。
まぁこいつサイズの服なんてこの家にはないけど…。
「ガキみてぇな寝顔…」
すやすや気持ちよさそうに眠る顔はホントに幼くて、可愛い。
その寝顔があんまりにも可愛いもんだから背に腕を回し抱きしめる。
「…好きだよ、シュウ」
広い胸板に額をおしつけると熱を直で感じる。
急に心臓の鼓動が早くなり不審に思い顔を上げると真っ赤な顔をした七五三木と目が合った。
「なっ…!起きてるならそう言えよ!」
きっとそう叫んだ俺の方が赤い顔をしていたと思うけれど。
「…い…今起きたんですよ…!もうホントに…俺を煽ることばかりしないでください」
「な!なにお前おっ勃たててんだ!アホ!」
下半身にあたる七五三木の自身により一層赤面してしまう。
「しょうがないじゃないですか!」
「うるさい!万年発情期が!」
そんな口気喧嘩をしていながらも、二人してお互いに体に腕を回したままだということに気付くのは、あともう少し先の話―…。
END
2011/01/06
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