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「恋」の意味
R指定:無し
キーワード:チャラ男×地味
あらすじ:恋に気づくまでもう少し、みたいな。チャラ男視点。
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俺は、今朝友だちに貸していた電子辞書の履歴を何気なしに見ていた。
あいつ要領わりいなあ。
画面を下へスクロールする。
一度俺が調べた宿題に必要な英単語をまた入力して調べている。
履歴みりゃいいのに。
まあ普段は紙の辞書使ってるようなやつだし、気が付かなくて当然か。
画面から視線を外したところで授業が再開した。
「意味調べ」と書かれた、一枚のプリントが配られる。
まあ電子辞書あるし楽勝っしょ。
斜めの席にいる友だちがおどおどしているのが見えて、使い終わったら貸してやろうなんて思いつつ国語辞典を開いた。
今は現国で三時間目だ。
英語との戦いはすでに一時間目で終わっている。
よし。
大方調べ終わった俺は、友だちに貸してやろうかと肩へ手をのばす。
あ、まてよ。
一度手を引っ込める。
どうせなら、履歴開いて渡してやった方がいいか。
閉じていた辞典を一端開き、国語辞典を選択したあとで履歴のボタンを押した。
項目を一番下まで戻して…と。
ついさっき入力したところまでスクロールした時だ。
俺はある事に気付いた。
俺が入力した事の無い単語の履歴がある。
ちらと斜め前に視線を移す。
こいつか、こいつだよな。
家族は学校に置きっぱだから使ってねーし、こいつ以外に貸した覚えねーし。
別に良いんだ。
使った事に対して不満がある訳じゃない。
俺は、罪悪感に苛まれながら再び単語を見た。
「恋」
こいつ、好きなやつでも出来たんだろうか。
そう考えると、思わずにやけた。
大人しいこいつが恋?
告白とかすんのかなー出来んのかなー。
「瀬山」
好きですとかいっちゃうわけー?
顔真っ赤にしながら?
なにそれかわ、
「瀬山!」
「っわ、はい!」
名前を呼ばれた事に気付き、条件反射的に立ち上がってしまった後で激しく後悔した。
こちらを見る視線は、どれもにやついている。
「楽しそうに笑ってたが何か、好きな子の事でも考えてたのか」
んー?と笑顔で首をかしげる担任は、実は悪魔なんじゃないだろうか。
「違いますよ!笹塚が!」
「え?」
「は」
斜め前の席…笹塚が振り返った。
「なんだ笹塚がどうかしたか?」
「いえその…間違えました」
俺の言葉に教室中のやつが笑ったが、笹塚はメガネを直しながら静かに前を向いただけだった。
「はい静かに、瀬山」
手拍子と共に再び名前が呼ばれる。
「はい」
「とりあえず教科書読んでくれ、58ページ2段落」
「は、はい!」
俺は例えようもなく恥ずかしくて、辞書を笹塚に貸そうとか履歴とか。
そんな事はキレイさっぱり忘れてしまった。
2011/05/25
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