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偽りの本心
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涙が零れそうだ。
だからぎゅっと目を閉じた。
気付かれない様に、知られない様に、悟られない様に、震える喉を落ち着かせる様にゆっくりと息を吐く。
何も変わらない、そうだ…これからも変わらない。
呪文の様に何度も心の中で繰り返す。
そうやって自分の感情をコントロールする。
いつもそうやってやり過ごして来た。
そしてきっとこれからもだろう。
俺がアイツから解き放たれるまで、続く儀式の一つ。
自分でも馬鹿だと思う。
俺なんかアイツからみたら友達、親友、幼馴染、相談相手。
それでも十分だろう、何度も言い聞かせて来た。
頭では分かっているのに、心が付いて来ない。
何度も何度も納得させようと繰り返し繰り返し言っても心がそれを受け入れず拒絶する。
壊れてしまいそうだ。
泣き叫んで、お前が好きだと言えたらどんなに幸せだろうか。
情けなくても良い、取り繕ってなんか居られない。
そこまで追い詰められた自分に辟易する。
それでもお前が望む俺で居たいとも思う。
幸せそうに恋人の横で微笑むアイツを見て俺は身体を翻して歩き出す。
良くある話。
親友同士が付き合い出すなんて。
一番祝福しなくちゃいけないのは俺。
笑顔で二人を祝福して、手放さなきゃいけない感情を引き摺って、一人耐えるだけ。
気付かれない様に、静かにこの感情が無くなるのを待つだけ。
でも知ってる。
この感情はいつまでも俺の心の中で燻り続ける事を。
いつまでも火傷の様にそこにあり続ける事を。
気付かれない様に、自分の気持ちに気付かない様に。
知られない様に、自分の気持ちを知らん振りする。
悟られない様に、自分の気持ちを無かった事に。
また目を閉じる。
息を吐き出してゆっくりを瞼を上げる。
そこにはいつもと変わらない景色が映っていた。
−end−
2012/01/17
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