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 雪色
© とらねこ 
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 R指定:無し
 キーワード:大学
 あらすじ:友達の緋色が気になる銀介。つい避けてしまい・・・。
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大嫌いな雪の日だった。

うるさいチャイムで偏頭痛に悩まされながら、銀介はノートを閉じる。悩み事があるとこめかみが痛くなるのは昔からだ。おかげでちっとも講義についていけない。三流大学なのだから、留年は免れたいのに。
放課後だったので帰ろうとしたところ、会いたくなかった相手に道を塞がれる。
「ちょっといいか」
端正な顔、すらっと伸びた背。淡泊な声だけで緋色とわかるのは重症だ。

人気のない校舎裏へ向かうと、緋色は迷わず切り出してきた。
「どうして俺を避ける」
ひらひら舞う雪を構いもせず、緋色は佇んでいる。
「避けて、ない」
共通の鈍い友人にすらばれている嘘をついてしまったので、当然緋色は眉をしかめた。
「もう一週間だ」
そう、七日前も小雪が降っていた。
遊びに行こうと待ち合わせていた緋色に駆け寄ったら、笑顔で迎えてくれた。やわらかくて慈しみ深い目。あれ以来、頭がおかしくなってしまった。
「気に入らないところがあったのか」
さみしがりやだからだろう、緋色はしつこく尋ねてくる。自分だけ避けられているのが引っ掛かると。偶然講義で隣に座って以来、緋色とは妙に馬が合う。
薄白く染まる景色に、言葉が溶けていけばいいのに。
「銀」
腕を引かれた瞬間、抑えていた言葉がこぼれた。
「狂いそうなんだ」
「銀?」
「緋色が、好きすぎて」
歪な感情だと知っている。同性に焦がれたことなんてない。
どうして緋色を好きになってしまったのだろう。体も心も独占したい。醜い嫉妬で振り回したくなくて距離を置いた。
ただ、嫌われるのが怖かったから。
「緋色が、大好き」
軽蔑されるだろうか。気色悪いと避けられてしまうかもしれない。
勢いで告白した惨めさを味わっていると、緋色の指が離れ、銀介の顔へ伸びた。
叩かれる。とっさに目をつぶると、降ってきたのは頬をなぞる優しい感触だった。
「馬鹿だな。そんなことで」
「え?」
「俺も、同じだ」


雪が降り積もると白黒になる世界が、寂しくて嫌いだった。
痛みも喜びも、分かち合う相手がいれば。
温かくなれると銀介は知った。







2012/01/24
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