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 光
© 鑞華 
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 キーワード:切ない 病み? 受け(?)視点 ヤンデレ 独白
 あらすじ:盲目の 私 と主人の物語
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なぜ、私はここにいるのだろう。
私は孤児だった。親はまだ生まれて間もない私を捨て置き、また男を引っ掛けに行ったらしい。保護されたときには栄養失調でいまにも死にそうだったと主人は言った。そのときの主人の声は深い悲しみと憤りを多分に含み、普段とは違った艶があった。

それはともかく、私は母である女に感謝している。なぜならば、私が無様に転がっていたおかげで主人は憐れみを示してくださったのだから。そのときの影響か、私は目の光を失い敬愛する主人の姿を見ることはかなわないが、主人は大きな温かい手で、そのままでいい、と頭を撫でてくださったのだからそれで良かったのだ。しかし、愚かな私はそのとき思って仕舞ったのだ。主人の姿を見たいと。屋敷には私の他召使は居ない。しかし主人はあんなにも魅力的なのだから色々な人が惹きつけられるだろう。主人は出来損ないの私など要らなくなるに違いない。それだけは嫌だった。目が見えたならもっと主人の役に立てるし、主の事をもっと知る事が出来ると。

それからの私の行動は早かった。今迄主人から与えられていたお小遣いを持ち、医師を主人の留守を狙って呼びつけたのだ。彼は所謂闇医者、という者らしい。金さえ払えば何でもやってくれる。正規の医師であれば、主人に話が流れないか心配だったのだ。例え私の事を話しているのだとしても、主人が他人と喋るというだけで鳥肌が立つ。闇医者は笑って私の目に薬をさし、帰って行った。主人が帰るまで、私は寝ることにした。

目が覚めると、光が溢れていた。主人が私に背を向け、何か書いている。はやる気持ちを抑え、主人、と呼ぶと主人は振り返ってくれた。主人の顔は表皮がデコボコと焼け爛れて目だけが綺麗に煌めいていた。私は綺麗だと、微笑んだ。主人は万年筆をポロリと落とし、泣きそうに顔を歪めた。

主人が私を捨てた。泣きそうな顔をしながら、私の鼻先で厚い扉を閉めた主人。何故だろう。もう私は用済みなのだろうか。これから、一杯主人のために尽くせると思ったのに。私は扉の外から問いかけ続けた。何故捨てたのだ、治すから捨てないで欲しいと。喉が枯れ、身体からもすっかり体温が奪われたとき、愛しい主人の声が聴こえた。目が怖い、お前も私を蔑むのだろうと。そうだったのか、と私は笑った。簡単ではないか、目を潰せばいいのだ。もう一度。私は落ちていた枝を拾い、躊躇いも無く目に突き刺した。

目の前が真っ赤にそまり、限界を訴えていたはずの喉から悲鳴が迸る。主人の動揺した声が聴こえないではないか。やがて、拾われたときの様に無様に転がる私の耳に扉の開く音が聞こえ…啜り泣きと共に大きな温かい手が差し伸べられた。












2012/02/04
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