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 風邪でもありません。
© しずと 
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 R指定:無し
 キーワード:切ない
 あらすじ:好きだから幸せになって欲しい、なら俺はいない方が良いっしょ?簡単な話。
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いつもは放置してるずびずびの鼻をかんだら、バカみたいな量の涙が溢れてきて色々と諦めた。
久しぶりに声を出して泣いた。

「別れよう」

そう言ったのは自分だけど。

こっちも見ずに肯定したのは、あいつ。

ああ。

実際に振られたのは俺なんだ。

ずず、と鼻をすする。

「別れよう」

「ああ」

二年間、細々と続いていた俺たちの恋はあっさりと幕を閉じた。

こんな短い会話で。

「嫌だ」

なんて返されるのを期待していたのか、俺は。

違う、そんなわけない。
乙女過ぎて自分に引く。

でも、あっさり肯定されるとは思っていなかった。

好きっていいはじめたのはお前じゃないか。

でもまぁ。

「二年も経つんだもんな」

そりゃ飽きもするか。

鼻をかんだら、また涙が出てきた。

好きだな、俺は。

二年経つけど。

まだ、好きだよ。

「…牛乳飲みたい」

泣きすぎて喉乾いた。

一人暮らし用の小さな冷蔵庫をあけ、買い置きしてある牛乳を手にとる。

「ぷは」

そのまま口をつけてごくごくと白い液体を喉に通した。

冷たい。

それは幾分か俺の心を冷やした。

俺、あいつの事、まだ好きなんだな。

でも、恐かったから。

お前の横に女の人が居る度に、俺達の関係はいかに不毛か思い知る。

俺はお前の負担になってないか。

とか。
色々考えた。

男同士ヤろうと思えばヤれるけど子どもつくれるわけでも無いし、結婚出来るわけでも無いし。

なんで友だちの関係でセーブして置けなかったんだろ。
その方が楽なのに。

今日飲みに誘われて、行ったら横に女の人が居て、考えてた事がバーって出てきたらワケわかんなくなっちゃって。

出てきた結論が、隣の女の人と一緒に居た方がこいつは幸せになれるんだ。だった。

「ウケる」

あいつの事、めちゃくちゃ好きじゃないか俺。

俺はその日のうちにメアドを替えて、その次の日には電話番号も替えた。保険にあいつの番号も着拒しといた。

あいつの声を一度でも聞いたら健気な俺が負けちゃいそうだったから、なら一度も聞かなきゃいいでしょ?みたいな。

まぁ、あっちから連絡くること自体無いだろうけど。

その日はホットミルクな気分だった。

いつもは朝起きたら冷たい牛乳って決まってるんだけど。

冷蔵庫から取り出した牛乳を、マグカップに注いで電子レンジにかける。

チンと音がして暖まったそれに砂糖はいれずに、そのまま口に運んだ。

あったかい。

やっぱり、あいつからの連絡は無かった。
電話番号もメアドも替えてるから、来るはず無いんだけど。

付き合ったばっかの頃にちょうど一人暮らしを始めた俺に、あいつがくれたマグカップ。

あいつと別れてから、新しい習慣が二つ出来た。

一つ目は早寝早起き。

あいつの生活習慣に合わせていた俺は、夜型人間から一般的な朝型人間に戻ることに成功した。
それでバイトも替えた。
そしたら運よく社員になれた。
今は職場の近くに引っ越して暮らしている。

二つ目に、いつも朝に飲んでいた冷たい牛乳がホットミルクになった。

あいつから貰ったマグカップで毎朝温める。

俺、このマグカップしか持ってないから仕方ない。

飲んで、ああ好きだなって1日の始めに思う。

牛乳、もちろん牛乳の話。

温めると甘くなってうまいよね。

ず、と鼻をすする。

なんだか癖になってしまった。

職場の人から鼻炎じゃないかと言われたけど、多分違うと思う。

あまりすすらない方が良いって聞くけど、俺はあまりティッシュを持ち歩いていない。

かむと、鼻の奥がツーンとして無性に泣きたくなるから。

敢えてこのまま。

大丈夫って顔をして街を歩く。

大丈夫、俺は1人でも大丈夫。

鼻の奥に熱を感じるまま、俺は今日も自分に言い聞かせた。







2012/02/10
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