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 第一歩
© 宮田綾 
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   あらすじ:佑一は高校の保健の教師が好きになって...
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9月。

「…ん…」
蒸しあつい。俺の額にほんのりと汗が出ていた。
ここ、何処だっけ…?
「…やっと目が覚めましたか。」
天井を見ていた俺の目は声の聞こえる方へと向いた。そこには黒いぶち眼鏡がアクセントの保健の先生、月島 忍(つきしましのぶ)が椅子に腰かけていた。
そうだ。俺、榊原 佑一(さかきばらゆういち)は授業を脱け出して、保健室のベットで寝ていたんだ。…今、何時だ?
「なぁ、先生」
「はい?」
先生は微笑んだ。
「今、何時?」
やけに周りは静かだし。外はまだ少し明るいけど遅い時間だったら帰らないと。
先生は白衣の裾をまくって腕時計を見ながら言った。
「もうそろそろ6時ですね。」
…もう6時なのか。帰らないとな。…でも、もっと居たいなぁ…なーんて思ったりして。俺は高校に入ったときから、先生を好きになったと思う。いつも、ドジで、可愛くて。守ってあげたいって気持ちになって、その日からずっと、保健室に来てる。先生は気づいてないと思う。俺が先生のことを好きだってことを。
「…そっか。帰んないとな。」
そう言って俺は起き上がる。なるべく先生と目を合わせないようにして靴を履く。…目を見たら、帰りたくなくなるから。
「じゃ、先生ぇどーもな。」
床においてあったバックを持ち、言った。
「もう行くんですか?」
…まだ居たい。
「うん。」
うつ向きながら苦笑いする。
「そうですか…。あ、いい忘れてたことがありました。」
「?…何?」
先生を見る。
「僕、佑一君の事がスキです。」
…え?
「ス…、キ?」
「…いつのまにか君がここに来るのを楽しみにしてた。君がそばに居ないと、会いたくなる。だから…」
俺は自然と先生を抱き締めていた。
先生は目を見開いた。
「…俺も、スキ!」
やっと欲しいものが手に入った。
そうして俺は一生懸命に先生を抱きしめた。
先生と目線を合わせると、先生は目をつぶった。俺はゆっくりと近づき、触れるだけの、優しいキスをした。














2012/05/12
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