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俺とあいつ。番外編
R指定:無し
キーワード:幼なじみ/ほのぼの
あらすじ:イケメンわんこ×ちびっこ平凡の日常
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「――でさー、田阪が……って、愁?」
ガタゴトと電車に揺られながら、珍しく空いていて座席に座ることが出来た俺たち。
他愛もない会話(ほぼ一方的な俺の話)をしていると、さっきまで相槌を打っていたあいつの声がピタリと止んだことに気づく。
となりに座るあいつを見上げてみると、すやすやと寝息をたてていた。
……寝てるし
不意にコテンと肩に重みを感じる。
ちらりとそちらに視線を向けると、あいつの頭のてっぺんが見えた。
重い、っていうか……恥ずかしいんだけど。
自分の肩を軽く揺らしてみるけれど、あいつはまったく起きそうにない。
しゃーねぇな……
――――……
「…で」
んー…?愁?
重いまぶたをこすりながら、ゆっくりと目を開ける。
「奏、ヤバイっ。」
「へ?何が??」
珍しく焦った声を出すあいつにつられて、意味もわからず俺も焦ってしまう。
「……乗り越してる。」
あいつの言葉に窓から見える景色に目をやり、「ゲッ、どこだよここ…」と思わず顔をしかめる。
周りを見渡すと乗客はまばらで、各停でもないのにこの少なさってどーよ…なんて思ってしまう。
時間帯もまだピーク時前だからかもしれないけど、それにしても……かなり遠くへ来てしまったようだ。
「帰るのに急行乗っても1時間はかかるかも。」
いつの間に席を立っていたのか、あいつは扉近くの路線図を見ながらゲンナリすることを言った。
早く降りたいけれど、次の停車駅まであと5駅ほど乗り過ごさなければいけない。
だって、この電車急行だから……最悪。
何で寝ちゃったかなー……
しかもふたりして爆睡って、オイオイ。
となりに戻って来たあいつに視線を移せば、なぜだかニッコリ笑顔を向けられた。
そんなあいつを見て、座席に深くもたれ掛かって大きなため息をつく。
「1時間かぁ、かったるー…」
「奏と一緒なら別に。」
聞いてもないのにそう答えるあいつに冷たい目を向けてしまう。
こいつは俺と一緒なら何でも楽しくなるらしい。変わったやつだ。
「寝るなよ。俺もだけど。」
これでまた乗り越したらかなりイタい。
「大丈夫、さっき結構寝たから。」
「奏は寝てもいいよ、……寝顔可愛いから見てて飽きないし。」
もちろん起きてても可愛いよ。
いやいや、別にそれ付け加えなくてもいいし。
何より、可愛いとか俺に言う言葉じゃないから。
………前から気になってたけど、やっぱり愁の頭はおかしいんじゃないか?
目もきっと視力下がってんだと思う。
だから、こちらを見て微笑んでるあいつに
「……いっぺん病院行ってこいよ。」
って、ぼそっと呟いた。
end
2012/06/10
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