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笑って笑って
R指定:無し
キーワード:甘々 恋人同士
あらすじ:年下(ヘタレ…?)攻めで恋人同士。佐伯の部屋に岩城が遊びに来たとある日の出来事。本サイト内ショートノベルより。
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ねぇ アンタの 笑った顔がすきなんだ
だから笑って?
場所は俺の部屋。
遊びに来てた先輩が、なんか、すごく寂しそうに見えたから…
「…っ、何やってんだ、佐伯!」
だって、アンタ、泣きそうな顔してたから。
先輩が勝手に俺の部屋でシャワー浴びてる隙に、自分の顔に落書きをした。
「…あー、もう、普通マジックで書くかぁ?アホだなぁ」
だって。
前にアンタ、俺の額に「肉」って書いて笑ってたから。
だから、泥棒みたいに髭かいてみたんだけど。
こうしたら笑ってくれるかなって思った。
「笑ってくれると思った」
ぼそ、と呟いた俺。
失敗したか、と肩を落として洗面所に向かおうとしたら、肩を掴んで振り向かされた。
目線はほぼ一緒。
線も細くないし、けして華奢でもない先輩。
それは俺も一緒で。
正直言って、俺たちが恋人です、っていうのが摩訶不思議な事実だって、友達は言う。
「…待て待て。
お前はほんとにいつも主語がない。
何がどうなってなんでそうなるんだ?」
アンタはいつもそうやって俺の話を聞いてくれるけど…
「…アンタ、寂しそうだったから」
そういう時、アンタは俺に本当のこと言ってくれないだろ、と。
言いたいんだけど言葉にならない。
「………あのなぁ。
二人のときにアンタ、って言うなつってんだろうが、このガキが」
二個しか違わないのに、ぐりぐりとコメカミを拳でやられて、呻く俺。
「っ、……っいっ…」
「ほら、俺の名前は?」
言ってみろ?と子供に諭すように目を合わせて額をくっつけられて。
…ちょっと…なんか、むなしい。
「………岩城サン」
俺は子供じゃないです。
「そーだけど、そうじゃなくって!」
…ああ、やっぱり苗字じゃダメか。
「…………暁」
ぼそ、と名前を言えば、にっこり笑われて。
「はい、良く出来ました」
「…でもそうじゃない」
ほめられたけど、そうじゃなくて。
笑ってくれたけど、そうじゃなくて。
「…だから、何がだよ…んっとにわかりにくいやつだなぁ、お前は」
それでも俺を見捨てずに髪をくしゃり、となでてくれた。
それがたまらなくて俯く俺。
「…笑って欲しかったんだ」
「…は?」
わからないって顔してるんだろうな、アンタ。
「悲しいとき、とか、寂しいとき、とか…言ってよ。
俺、わかんねーし…
言葉にすんの、ニガテ、で。
なんていったらいいかわかんねぇ、から。
悲しいときは、無理しなくていい、し、そういう時は笑わなくていい」
そう。
笑って欲しい。
でも、無理な笑顔はいらないんだ。
「………」
頑張って言葉を搾り出した俺は顔を上げて…
「驚いた」
目を大きくして俺を凝視してる暁と目が合った。
「佐伯がそんな、風に思ってたなんて」
「…佐伯、じゃなくて」
む、として口を返したら、
「鉄、ありがとう」
そのまま抱きしめられた。
「すげー嬉しい。
なんかいつもさ、俺ばっか話してる気がしてさ。
寂しかったんだぜ?
今日のは…、あれだ。
…くそ、言うのすげー恥ずかしいんだけどな、ああ、くそ。
…お前が。
傍にいないのが寂しいなぁ、なんて思ったんだよ!
いつも一緒だったろ?部活。
…だけど、俺、大学行ってからお前いないし…あたりまえだけど」
思い出したらそれが寂しかったんだ、と照れくさそうに言った暁。
……。今度は俺が、ぽかん、とした。
「…真っ赤」
いつの間にか、真正面から見つめていた暁に頬をつつかれて我に返って。
「…暁だって」
顔、赤いのに。
「……っ、くくく」
「はは…」
おかしくなって二人で笑いあった。
ああ、なんだ。
アンタも、俺のこと考えてくれてたんだな。
「なぁ、鉄。お前、今みたいに思ったこと、言えよ?
なんとなくわかること多いけど、言葉にしてもらったほうが嬉しいこともあるんだからな!」
うん。
「わかった」
そういったら、花が咲いたみたいに笑ったアンタ。
ああ、なんだ。
…俺が笑えなくしてたんだ。
ねぇ、笑って笑って。
俺も頑張るから。
あんたも、俺に、思ったこと言って。
そして…悲しいときは泣いて、寂しいときは言って?
俺も、そうするから。
ねぇ、大好きな人。
END
2007/02/15
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