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マイナス+感情=プラス
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暗い暗い部屋。
電気も点けず、薄いカーテンが引かれた窓からは頼りない光が僅かに差し込むだけ。
でもその光すら僕達を照らすに至らなくて。
作られた闇に身体を置いて、小さな泣き声を聞きながら僕はただ、そこにいた。
ヤスの泣く声を聞きながら、宥める事も離れる事もせずに、そこにいた。
泣かせたのは僕。
分かってた、駄目なんだって、無理なんだって、違うんだって。
それでも向けられる言葉に視線に感情に、少しずつ蓄積されてく僕のドロドロとした感情が揺らめいた。
揺らめいて、零れて、汚す。
僕の感情が、ヤスの綺麗な心を汚した。
「ヤス…」
ヤスの圧し殺した泣き声だけ聞こえる部屋で僕の発した声がやけに大きく響いた気がする。
僕の背中越しにいるヤスの身体が不自然に大きく揺れた。
それと伴い耳に届く不快音。
ベッドが軋んだ。
『やっ、だ!やだやだやだ!止めろ!』
ごめんね、もう僕じゃどうにもならないんだ。
『ミノリ…っ!』
あぁ、まだ僕の名前を呼んでくれるんだ。
僕の動きに合わせて軋むベッド。
僕の動きに合わせて耳に届くヤスの泣き声。
僕はヤスをレイプした。
ずっと好きで、ずっと傍にいたくて、ずっと触れたくて、ずっと怖くて。
零れて作った染みは消えずに広がる。
僕のドロドロした感情は、綺麗なヤスの心に張り付いてまとわりついて剥がれない。
『……好きだよ、好きだよヤス…っ』
相手を犯しながら繰り返す好きという言葉。
嗚咽を交えてひたすらに繰り返す好きという言葉。
零れる涙がヤスの頬に落ちる。
いくつもいくつも涙の粒がヤスの頬を濡らした。
『ごめん、好きだよ、ごめん…っ』
何度も繰り返すごめんという言葉。
好きと同じ分だけ繰り返すごめんという言葉。
「………………ヤス?」
再度呼び掛ける声。
背中に感じる気配が動くのが分かった。
ヤスの手が僕の首に回る。
力を込めて、きつく締め上げる。
「許さない……お前なんか許さない…っ!」
緩む手、塞き止められていた酸素が喉を通過する。
許さない、許されない。
あぁ、ヤスの中に僕は居続けられるんだ。
そう思ったら…幸せだった。
2013/07/25
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