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 過去の人、未来の人
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 やたらと突っかかって来る奴がいる。いや、突っかかって来るというよりは纏わりついてくる奴の方が正しいのかもしれない。

 親友曰く、

「俺様だって聞いていたけど、あれじゃただの構ってちゃんじゃん」

らしい。人付き合いの苦手な僕を思いやっての言葉だろう。

 信濃環。どちらかというと学校では怖がられている部類に入るだろう。どこかの大きな族のトップだとかまことしやかに噂されている。噂が流れたころ、彼が何度か否定したのを僕は覚えているが、いつの頃か否定する事すらやめてしまっていた。きっと煩わしくなったのだ。その頃からか、信濃は僕に

「付き合え」

というようになった。もちろん、定番通り、どこへ? と聞いた僕。だからその付き合えではなくではなく、好きだから付き合って下さい、っていう意味だってことは確認済み。

 自分に怯えない僕が珍しかったからかもしれない。

 僕も信濃のことは嫌いじゃない。嫌いじゃないけれど、付き合いたいかと言われたらよくわからない。以前付き合った少し年上の男は外面の良さと正反対に暴力的な人だった。その人と別れたのは、僕が大怪我をして保護されたのと、それが原因でその人が逮捕されたからだ。今でも悪い人ではなかったと思う自分が悔しい。

 結局僕は一年遅れて高校に進学した。

 だからどうしても信濃のことがお子様に見えてしまうし、そんな暴力的な噂が絶えない彼をどこかで前の人と同じだったらと思ってしまうのだろう。

「そんなわけで、信濃君とは付き合えません。 このままの関係でいいなら……」

 あわよくばお友達からなんて考えをにじませながら告げる僕に、信濃は

「別に、焦らねえ」

と一言。

「ちなみに、幸前が年下だからな」

「へ??」

 何とも間抜けな返事をしてしまったものだ。

「いや、だからお前が年下。 そこだけは訂正しとく。 俺、一度入った高校辞めてるから。 噂の出所はそれが原因。 2年遅れで入り直してるから」

「なんで?」

「……喧嘩でちょっとやりすぎて入ってたから。 だからと言って好きな奴に暴力振るう気持ちは理解できないけどな。 まあ、とりあえず楽しかったらいいんじゃね? そのうちお前のことを振り向かせて見せるし」

 しれっと言った信濃に一瞬とドキッとしたのは当分内緒。

 僕が過去の人から吹っ切れるのもそう遠くない話かもしれない。







2013/09/06
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