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 二月の融点
© Nir 
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 R指定:無し
 キーワード:失恋
 あらすじ:甘美なその固形物に踊らされてしまった。
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「二月の融点」










二週間、必死で祈り続けた

今から思えば、本当に遅すぎた










店先を覗いてみた。

国名のやつだったり、時代の名前だったりと、様々な長方形が積み重ねられている。

僕はその一つを手にとってみた。

軽くて、薄っぺらい。家の表札と同じ大きさだなぁ。

これ一枚に自分の気持ちを全て詰め込むことができるんだ。恋文もいらないなんて、時代は進歩したんだね、と昔の詩人は感心するだろう。それともこの手軽さを嘆くのだろうか。










裸になった姿を見つめた。

艶やかで、甘美で、ちょっぴり妖しい。思わず舐めてみたくなる妖しさだ。

それなのに楚々とした雰囲気も漂わせているんだから、本当にけしからんやつだ。



この役立たず



僕は噛み付いた。

パキン

骨が折れる音。





「うっ・・・」僕はうめき声と一緒に、口の中のものも吐き出した。

これは、何?泥?炭?





脱ぎ散らかされた服を急いでかき集める。

するとラベルの所に、こんな文字が見えた。



『99%』





できることは全部やったはず。

毎日挨拶するように頑張ったし、神頼みもした。

攻撃用の「武器」の選択も悩んだ。

100%の勝率を持つ武器にしたかったけど、デパートには売っていなかった。

1%は我慢しよう。仕方ない。

僕は99%のを手にした。





そして結果として僕は、1%の確率で負けたことになる。

そして思った。この世に本当に本当の100%のものなんて、ないんじゃないかって。

僕は大変な思い違いをしていたようだ。



『CACAO 99%』










舌の上にいつまでも残る後味の悪さは、今の僕の状況を皮肉っているとでも言うのだろうか



ちらちらと舞う粉雪

指先に触れて、儚く消えゆく粉雪



人肌にたどり着くまでに溶けてしまった

そんな僕の気持ちはチョコレート

誰か、食べてくれる?

言っとくけど、すごく苦いからね







2013/09/15
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