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 影。
© 紅暁 
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「ねーねー」


学校の帰り道。



太陽が並んで歩くデコボコの二つの影を作る。



夕日というには強すぎる日差しに汗ばみながら歩いていると、深春が話しかけてきた。


「んぁ?」


見上げると汗一つかいていない涼し気な顔と目が合う。
でもなんか恥ずかしくてちょっと目をそらす。


「明日世界が終わるんだって。知ってた?」

「あー、なんか言ってたなー」

テレビや新聞で騒がれてたのは知ってるし、クラスでも騒いでいた。

だいたい「今日最後の晩餐!?何食べよう!?」とか「あー告白してやるー!」とか、
すんげーくだらないことだったけど。


そういえば、こいつは?


「で、世界最後の日がどーした?」



「時雨は今日何するー?明日最後ってことは今日が最後だよ」


「なんだよその日本語。どーもしねーし、なんもないって」


あんな噂を間に受ける方がどうかしている。


だいたい最後だからなんだよ、なんて答えればいいんだ?

最期は深春といたいって?いやいや、そんなこと・・・


言うようなあれじゃねぇし?


「じゃあさ、もしホントだったら時雨は僕といてくれる?」




「え?」


「だから、僕は時雨が好きでしょ?」



「っ!?知らねぇよ!」


急にこんなことを言うから困る。

どうしよ、別になんともねぇけど。



暑い。





熱い。




あっつい。




太陽のせいじゃないってわかってて、なんか悔しい。



うつむく。



「んと、だからね?やっぱ最後なら一緒にいたいなーって思った」


並んだ影が揺れる。

隣りに並んで歩く深春が半歩近づいた気がした。



「時雨は?時雨も僕のこと好きだから一緒にいたいよね?」


「かっ、勝手に決めんな!別に好きとか・・・」


「じゃないの?」


ん?って、そう問いかけながら顔を覗き込んでくる。


やめろ。


見んな。



深春の問いかけには答えず、歩く。


半歩だけ近づいて。



あんなに明るかった太陽の光も、沈んでしまえば暗くなる。





たまに深春はこういうこと言うけど、オレは答えない。


深春が問いかけるほど、あたりが暗くなるほど、二人が近づくほど、


身体が勝手に動く。



街灯に照らされるたび大きくひとつになった影が浮かんだ。



オレは右手で深春の左手を握りながら「好き」ってつぶやいた。


















2013/09/20
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