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 Kiss〜天の川にのせて〜
© りんごほっぺ 
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 R指定:---
 キーワード:BL キス 七夕
 あらすじ:キスをしまくるお話。
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※BLです。



ふわりと、キスを落とす。
甘く、軽く、優しく……。
僕らの世界を苛む全ての闇を、一瞬で消してしまう魔法。
チュ……と控えめな音を漏らし、小さな幸せを運んでくる。


縄で手と足を束縛された加藤遼が抗議を始めた。
「変態!ほどけアホ!こっちくんな馬鹿!」
その抗議を楽しそうに眺めているのは長谷川祐介。
「そっち行かなきゃほどけないじゃん、遼のバーカ」
遼が祐介を睨む。
「もうほどかなくていいからこっちくんな!触るな!」
遼が真剣な目つきで声をあげた。
しかし、いくら睨んでも、縛られて床にぺたりと座り込んでいるため凄みがない。
「酷いわ遼ちゃん!長谷川ショック!」
「うざいよ、お前。ガチな方で。」
「ごめんごめん、俺が悪かったから。怒らないでよー遼ちゃん。」
祐介がふわりと抱き着く。
「別に、怒ってない。」
「怒ってんじゃん?」
祐介が遼をベッドに押し倒した。
「縛られて喜ぶほどMじゃないだけ。」
「でも押し倒されて赤面するくらいには、Mなんだね。」
「それMとか関係ない。」
「じゃあ、ただ好きなだけ?」
「ばーか」
二人の唇が重なる。
甘く、軽く、優しく……。
深くまで舌をのばせば、壊れてしまいそうな、曖昧な関係。それでも、そんなことは気にならなかった。


「ねぇ遼。」
「何。」
「俺だけを見てる?」
「さあね。でも、俺から見えてて、祐介に見えてないものが一つあるんだよね。」
「なぁに?」
「知りたい?」
「そりゃあね。」
「じゃあ、縄、ほどけよ。見せてやるから。」
「本当?にわかには信じられないんだけど…」
佑介がくすくすと笑いながら、遼の縄をほどいた。
「はぁーー。楽になった。」
「遼ちゃーん!」
「うるさい、甘えてんなよな。」
毒づきながらも、遼は祐介に抱き着いた。
「遼ちゃん?」
「黙ってろって。舌噛んじゃうだろ。」
今度は遼から、ふわりと甘くて、長いキス。
ゆっくりと、遼が佑介を押し倒す。さっきとは、逆だ。
祐介は困惑していた。こんなに積極的な、攻撃的な遼は初めてなのだ。いつも祐介がいじめて、遼が拗ねて、キスをして終わり。それが、今日は違う気がした。
(俺が下にいるなんて……初めてかも……)
長いキスが終わり、遼が力を抜いて完全にのしかかってくる。さすがにちょっと重い。
「祐介。」
「なに、重いんだけど」
「見えたろ?」
「へ?何が。」
「天の川」
祐介が窓の外に視線を移す。
「あ、本当だ、天の川が見える。」
「織姫と彦星の天の川。」
「そっか、そうだよね、片方だけが天の川見えてもしょうがないよね。」
「そういうこと。二人から見えなきゃ、意味ないだろ。」
「でも、二人並んでみればいいんじゃないの。」
「ばか。織姫からは天の川と彦星、両方が見えるはずだろ?」
「そっか……」
「そうゆうこと。」
「遼ちゃん賢−い、大好き」
「俺もだよ……とか気持ち悪いことは言わねぇからな。」


しばらくぼんやりと天の川を眺めていた佑介がふいに喋り出す。
「あ、質問!織姫と彦星って、どっちが攻め?」
「さあ。何考えてるのかと思えば、そんなこと。彦星じゃん?」
「ふーん」
「なんでそんなこと、聞くんだよ。」
「え、特に意味はないよ?」
「馬鹿じゃねぇの。変態。」
「キスしよ?」
「やだ。なんだよ突然だな。」
「なんで?」
「俺、織姫だから。上は嫌だ。」
「しょうがないなぁ、彦星さまが押し倒してあげるよ。」
「うん。」
「ドMだね」
「ちげぇよ」
そう言って、押し倒された遼は目をつぶった。
祐介はそれを見て微笑する。
(こいつ、完全に受け身でいるな……)
待っている……遼の鼓動が早くなるのを感じた。少し、裏切りたくなる。
祐介はゆっくりと唇を遼に近づけ――頬に『チュッ』と音がなるようにキスをした。そして驚いた顔をした遼の耳元でささやく。
「キスよりもさ、一年で一回しかできないような、すごいことしよう?遼ちゃん。」
「た、例えば……?」
「想像、できるでしょ?一年で一番Mな遼ちゃんにしてあげる。」
遼の顔がみるみるうちに赤くなる。
「ばか。好きにしろ。」
「やった♪」
祐介の顔がほころんだ。


一番可愛い、織姫と彦星。そして二人を繋ぐ天の川という名のキスのお話。

【完】









2013/11/10
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