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 愛しい愛しい愛おしい
© 八咫鴉 
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 R指定:有り
 キーワード:歳上攻×遊び人受、攻め独白
 あらすじ:初夜後、腕の中で眠る恋人に想いを馳せる攻めの独白
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ほんの数時間前、俺はこいつを抱いた。

腕の中で徐々に乱れていくこいつはとても扇情的で、普段とは倍違う色気があるくせに、いつになく可愛いらしかった。

本当は優しくしてやりたかったのに、そうする余裕さえ無くて、ただひたすら抱いて、抱いて、抱き続けて、こうして夜が明けるまでお前のことを離してやれなくて、優しくなんてとてもじゃないが出来はしなかった。

明け方近く疲れ果てて、ぐったりと眠ってしまったお前の寝顔を見て、漸くかなり無理をさせてしまったと気付く。

昔誰かと付き合っていた時は女や男とセックスしようが、今まで一度もこんな風に理性が剥がれ暴走することはなかった。

自分自身の抑えが利かなくなるほど、誰かを本気で愛したくなったのは、これが初めてで、自分でも正直驚いてしまう。
恋愛は単なる気まぐれ程度、にしか思っていなかった俺にもこういった情熱的な一面があったということに。

しかも相手は遊びの恋愛しかしてこなかった生粋のゲイで、当初は俺も数いる遊び相手の一人に過ぎなかったらしい、そんな相手を本気にさせるのにどれほどの多難があっただろうか?今では思い出せはしないが、ただ手に入れたくて必死だったということだけは確かだった。

いつもすぐ近くに居るのに違う誰かを見つめていた瞳を、手を伸ばせども触れられなかった心を、届かないような存在だったお前を、やっとの思いで手に入れることが出来て、嬉しい気持ちと報われたという思いとが混じり合ったその高揚感が俺の箍を軽々と外してしまった。

その結果が今に至る。

伏せられている長い睫毛は未だ涙で濡れていて、頬にもうっすらとだが涙の筋が残っていた。


「……疾叉、ごめんな。」


途中で泣かせてしまったことは覚えている、けど歯止めを掛けられるほどの大層な大人は出来ていなかった、齢30にもなる男が、だ。

もう何度目かも分からないほど、手で、口で、俺はこいつを絶頂へと導いてやった。
イかされ続けて気だるそうに潤んでいた瞳は、すぐには忘れられそうにもないだろう。あの瞳を、あの泣き顔を思い出すだけで俺の下腹部が今にも疼き出しそうになるほどだ。

どうやらお前の泣き顔は俺を煽る材料にしかならないらしい。

好きな子ほど苛めたくなるドSの気持ちが、今では分からなくもないなとも思えてくる。


「何かお前のこと泣かせるのクセになりそう。」


俺がこんなことを思ってると知ったら、きっとお前は怒るんだろうな。

ふわり、と柔らかな髪に指を通す。
優しく優しく労るように髪を撫ぜていると、その感触に少し身動ぎした疾叉がうっすらと瞼を持ち上げ、朧気な瞳で浪の顔を見上げた。


「わりぃ、起こしちまったか?」
「……んーん、平気。きもち、いい……」


少しだけ掠れた、舌っ足らずの声が浪の鼓膜を擽る。
まるで仔猫を愛でるかのように、髪を撫ぜ続けたまま浪は瞼の上にキスを落とした。


「お前まだ寝惚けてるね。すげぇ可愛い……喰っちまいたい」


そんな冗談半分の囁きが響いてすぐ、疾叉がすりすりと胸元に擦り寄ってそして、緩やかに唇を横に引き、にっこりと笑った。


「……あんたに全身喰い尽くされるのも良いかもね。……でも、その前にあんたの腹がいっぱいになるのが先かもな?」


先程までの寝ぼけ眼は何処へやら、今ではもう見上げてくる瞳の中にしっかりとした情欲の色が灯っていた。
男を誘う独特の色香を纏い近付いてきた唇を奪い、
再び華奢な身体をシーツに縫い付けて、
その上に覆い被さる。
呼吸までもを奪う深い接吻に酸欠を訴えうっすら潤む瞳、
それはほんの数時間前の行為を彷彿とさせるような光景だった。


「んな心配しねぇでも良いって。安心しろよ、骨の髄までしゃぶり尽くしてやるから」

「ふふふっ、楽しみにしてるからな……?ねぇ、それより……キスだけで終わりじゃ、ないだろ?」


そう言って誘うように舌を舐めずる疾叉の妖艶な仕種に、理性の糸はいとも容易くぷつんと、切れた。

この調子じゃ、べろべろに甘やかして、嫌ってほど優しくするなんて上等なこと、いつまでたっても出来やしないな。
そんなことを考えながら、浪は白い首筋に顔を埋めた。

朝日に照らされた二人の影がまたひとつに折り重なる。
再び甘ったるい恋人の喘ぎ声が部屋中に木霊した。








2013/12/05
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