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 この恋が僕を殺す
© 野芝乃でんこ 
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 R指定:有り
 キーワード:教師×教師 背徳 敬語攻め 年下攻め エロ 言葉責め 溺愛 甘々
 あらすじ:こんな、小学校のトイレでなんて。いけないことだとわかっているのに……甘く囁かれたら、僕は――
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 まるで猫のよう。雨の日は決まって、竹川《たけがわ》先生がこうした気だるげな表情を見せてくる。並んで小学校の廊下を歩く、その動きだっていつもよりほんのり鈍い。窓の外にしとしとと降っている雨粒が、その胸、身体へ溜まっているとでも言いたげだ。

 僕よりも四歳年下の、三十一歳。一年四組を任されている彼は、若いのにとてもしっかりしている。髪を染めてはいないのに、どこか遊んでいる風に見えるのはきっと、その髪型がそうさせているのだろう。クラウドマッシュウルフカット、だっけ? 一見しただけで彼がお洒落だとわかる、流行の髪型。左斜め前に軽く流している前髪が、片方の眉を隠している。

 どこの美容室に通っているのですかとたずねてみたいのにまだ、聞けていない。このシンプルな、ただ切ってあるだけのショートカットを彼のような洒落た感じにしてみたいけれど、どうにもわずかに残っているプライドが邪魔をする。ただでさえ、彼にはお世話になっているのだ。

 僕という人間に寄せられる言葉といえば、おとなしいだの、目立たないだの。それだけならばまだいいけれど、おっちょこちょい、まぬけ、どじ、と……いくら自分で注意をしていても何故か、そう言われても仕方がないような失敗ばかりを繰り返してしまっている。その尻拭いを竹川先生にさせて――申し訳無さと恥ずかしさで軽く、魂が空に上りそうだ。

「何を考えているのですか?」

 突然顔を覗き込まれ、つばを飲み込んでしまった。

「いえ、あの……雨、止みませんね」

「朝から降っていますからね」

 竹川先生が立ち止まった。それにつられてこちらの歩みも止まる。

 窓の外を眺めているその横顔は、格好いい。くっきりとした二重まぶたがうらやましいし、彫りの深さにも憧れてしまう。

「夕日、見られませんでした。上代《かみしろ》先生と二人で眺める時間を楽しみにしていたのですけれど、ね」

 やわらかく目元を緩ませた笑みを見せられて、鼓動が跳ね上がった。

「竹川先生は夕日がお好きですよね。僕は、あの赤い色が少し苦手だな」

「俺は逆に、雨が駄目ですね。どうにもだるくなってしまう」

「児童にもそういう子がいるのかな。雨の日は決まって遅刻してくる子が一人、クラスにいますよ」

 竹川先生が、まぶしそうに細めた目でこちらを見つめてきた。

「そうやって、児童一人一人へ細かく目を行き届かせる上代先生が好きです」

 頬が一瞬で熱くなった。

「や、からかわないでください」

「照れ屋なところも可愛いですね。さあ、行きますよ?」

 再び歩き出した竹川先生の隣へ並ぶ。

 窓ガラスに映った自分の顔。切れ長な二重まぶたが恨めしい。銀縁めがねをかけているからまだ、レンズのお陰かその目つきが多少はましになるのだけれど。

 竹川先生がトイレの前で立ち止まった。

「さ、お先にどうぞ」

 と、横へ退いて先へ通される。

 もう時刻は夕方六時。大半の児童は帰っている。

 中へ入ると人は居なかった。ほっと胸を撫で下ろす。

 二人で個室へ入るとすぐに、竹川先生が唇を寄せてきた。

 その、肉厚な唇でキスをされるといつも、こちらが食われているような感覚に落ちる。

 唇の端から端まで舐められて、首の後ろがゾクゾクした。

 キスは、どうしてこんなにも気持ちがよいのだろう。ざらりとした舌の感触。どんどんあふれ出してくる唾液が絡まりあって、唇の端から滴り落ちてゆく。

 うっすらとまぶたを開いたままキスをすると、竹川先生の長いまつげが近くに見える。影を帯びた目元が徐々に赤くなってゆく様子を見ることが好きで、こうしていつも、まぶたを閉じられない。

 竹川先生が、ネクタイを緩めた。

「ほら、上代先生。ネクタイをください?」

 疑問符をつけていても、強い瞳の輝きで、命令されているのだとわかる。

「ほ、ほんとうにここでするのでしょうか」

「何を今更戸惑っているのです? 一昨日から計画をしていたでしょう? 児童が帰ったか、帰っていないか曖昧な時間帯に、こうしてトイレで――」

 頬へ降ってくる、キス。

「セックスをするのだと」

 ぶわりと汗が吹き出してきた。

 蝉の鳴き声は聞こえてこない。それはそうか。雨が降っているのだもの。

 彼らは雨の日、雨が降る予感がしたらもう、口を閉ざす。今日のような日は羽が濡れるので飛べず、オスがメスを呼ぶその声を発することが無駄に繋がるから鳴かないらしい。

 ネクタイを解いて、竹川先生に手渡す。ああ、困った。

 唇の端を片方だけ吊り上げ、歪んだ笑みを見せてきた。どうやらもうスイッチが入ったようだ。

「ワイシャツは脱がないで、ズボンとパンツだけを膝まで下ろしてください?」

 優しい口調なのに、有無を言わせない強さを感じる。

 ベルトを外し、ズボンとパンツを同時に掴んで膝までずり下げたらすぐに、竹川先生が背後へ回り込んできた。両手をネクタイで強く縛られる。

「あれ、上代先生?」

 背中から抱きしめられた。股間に伸びてゆく手が見える。

「もう、やや勃起していますね。いやらしい……」

 背筋がゾクリとした。頬にまで鳥肌が立つ。

「た、竹川せんせ――」

「ねぇ、上代先生。このペニスはいったい何を期待しているのでしょう?」

 意地悪だ。何って、決まっているではないか。そのためにここへ来たのでしょうに。

 しかしそれを素直に告げることは、どうにも難しい。

 顔が熱い。首だけで振り向くと、竹川先生の口元が見えた。笑みは消えていない。

「ほら、言ってください? これ、どうして欲しいですか?」

 ペニスの根元を掴まれゆるゆるとしごかれた。甘い感覚がそこから伝わってきて、膝をもじもじと揺らしてしまう。

「どうして、って……そんなの……」

「言えないですか? そんな馬鹿な。ああ、まだ頭が教師から、いつもの淫乱な貴方へ切り替わっていないのですね」

 と、耳元で囁いてきたかと思えばさらりと前へ回り込んできた。

 目の前にしゃがみ込まれて焦る。

「スーツのズボンの裾、汚れてしまいますよ」

「別に、構いません」

 ペニスに息を吹きかけられて背筋が伸びる。

「上代先生の、淫らな顔が見られるならばどれだけでも汚れますよ」

 上目遣いで何ってことを言うのだ。

 心臓が煽られた。首元の、頚動脈が、頭の中へ太鼓の音のような強い鼓動を送り込んできた。

 薄暗い中で、竹川先生の目が光っている。

 胸を掻き押さえたい手は、後ろに拘束されていて――苦しさを誤魔化せない。

 ペニスの根元をまた握られて、ゆるゆるとしごかれた。そのまま親指が亀頭へ襲い掛かってくる。こねるように先をぐりぐりと強く押され、ああ、もう――

「せ、んせぃ……早く……」

「あれ? あんなに、トイレで性行為をすることへ戸惑いを見せていたのに、上代先生は本当」

 亀頭へ軽くキスされた。

「いやらしい」

 もどかしい。肌に走るゾクゾクとした甘い感覚が消えない。

 ちろりと亀頭を舐められた。その間も根元をゆるゆるとしごかれ続けている。

 立った乳首がワイシャツの内側にすれて、下腹部がきゅっと締まった。

 今度は竿の部分に唇が降ってくる。ハーモニカを吹くようにそこをさらりと唇でなぞられて……たまらない。

 目の前に靄がかかったようだ。頭の中はペニスに与えられる刺激の事でいっぱい。

「そ、うです……ですから早く、しゃぶ……って……」

 吐息とともに言葉を吐き出した途端、じゅぶじゅぶと音を立てながらペニスをしゃぶられた。

「っぅぁあっ」

「先生、静かにしないと。もしかしたらまだ児童が学校に残っているかもしれませんよ?」

 ペニスを唇から離して言うと竹川先生はまた、それへ強く吸い付いてゆく。

 赤い舌が見える。いや、きっと見せ付けてきているんだ。にやりと吊り上った唇。からかうように上がった眉がそう物語っている。

 舌の上にペニスが乗せられ、じゅるりと口内に啜り込まれ、唇で締め付けられて、息がうまく吸えないくらいに気持ちがいい。

 しばらくそうしてしゃぶられていたら、腰が勝手にびくつき始め、全身に汗がにじみ出てきた。

 次第に激しくなるフェラチオへ射精感を覚える。

「せんせ、い、出てしまいますか、ら……口、離し、て」

 腰をよじって何とか唇から逃れようとするのだが、そうはさせまいとするかの様、背中に回ってきた手に腰を掴まれてしまった。そのまま、唾液で肉が摺れる音を響かせたバキュームフェラをされて、も、駄目、気持ちいい、きもち……イク、イクっ、イクッ!!

 ああっ、と、我に返った時にはすでに遅かった。

 竹川先生が、精液を唇の端から垂れ流しながら妖艶な笑みを向けてくる。

「……濃いですね。最近セックスをしていませんでしたが……ご自分でスペルマ、出されていなかったのですか?」

「す、スペルマって、言わないで下さい……」

 聞きなれない単語に耳が熱くなった。

 ふっ、と吐息の混ざった笑い声を出されて恥ずかしさが増す。

 トイレの小窓ががたたっと音を立てた。外は風が強いようだ。

「さて、上代先生? 次はどうするか、わかりますよね?」

 立ち上がった竹川先生より顎で個室のドアを差され、のどが鳴る。

「そこに肩をついて?」

 すでに一度吐き出したというのに、更なる快楽の予感にペニスがひくりと跳ねた。

 言われた通り、肩と頬をドアへつけて、そこで体重を支えながら腰を落し、臀部を後ろに突き出す。

「ああ、可愛く蠢いていますね、ここ」

 尻穴を指でそっと撫でられて、わずかに膝が揺れてしまった。

「どう弄って欲しいですか?」

 隠微な響きを含んだ声に期待が高まる。

「いつもみたいに……」

「激しく?」

 うなずくと、背後からのどで笑う声が聞こえてきた。

 唐突に尻の間へ冷たい液体を流し込まれ、その感覚に背中が跳ね上がる。

 ああ、ああ。鳥肌が。後ろ首から、どんどん全身へと広がってゆく。

 早く欲しい。我慢できない。

 こんな場所で。アンモニアの匂いが漂ってくる、不衛生で、誰かが現れるかもしれないこの、トイレで……何という背徳感。

 こんなことは今すぐ止めないと。でも、流されてしまって――いや、違う。

 違う。認めなくては。

 僕は、すごく興奮している。

「中、指を入れますよ?」

「い、言わないでください」

 恥ずかしいのともどかしいので、身体の熱がどんどん上がる。

 壁を広げるようにして中に入ってきた指が、くにくにと、何度も出入りしてきた。

「上代先生? そんなに、締め付けないで?」

 優しげな甘い声に胸がきゅんとした。

 竹川先生はいつも、こうしていけないセックスへと僕を誘ってくる。駄目なのに。教師という立場上、こんなことは止めなければならないのに。

 ゲイであること自体、ばれてはならない。保護者に顔向けが出来ないし、もし知られてしまったら教師を辞めなくてはならなくなるだろう。そして、竹川先生とはもうこうして触れ合うことが出来なくなるかもしれない。それなのに、いけないのに、ああっ、どうしよう。気持ちいい……

「中に入っている指に、肉が絡んできますね。そんなにいいですか?」

 胸がいっぱいで言葉にならないので三度、うなずく。

 竹川先生が、背中に覆いかぶさってきた。

 尻穴に、あてがわれる、肉の感触。

「入れて欲しい?」

「い、れてほしっ、です……おねがっ、い……」

 耳の後ろへキスをされた。

 ごそごそと動く音が聞こえてくる。きっとコンドームを装着しているのだろう。

「可愛い。好きですよ、上代先――」

 突然トイレの中が明るくなった。身体が硬直してしまう。

 竹川先生の動作も止まった。二人で息を殺す。

「あれぇ? 誰かトイレ入ってるのぉ?」

 聞き覚えのあるこの声は――井上だ。僕の受け持っているクラスの児童。

 まずい状況に、火照った肌が一気に冷めた。

「返事、しといたほうがいいですよ、先生」

 と、耳元で囁かれる。確かにそうだ。怪しまれて他の教師でも呼ばれてしまったらいい訳ができない。

 何度か深呼吸をし、口を開く。

「ああ、井上君だよね? 先生だよ、上代です。ちょっとお腹が痛かったので教員用でなくこちらのトイレを使わせて――」

 と、声を落ち着かせ言った瞬間、ペニスが中にめり込んできた。

「っ、もらって、います……っ」

 歯を食いしばって快楽に耐える。

 竹川先生を睨み付けたいのは山々だが、この体勢では無理だ。

「お腹、大丈夫?」

 ドアのそばから井上の声が聞こえてきた。危ない。

「だい、じょうぶです、から……井上く、ん、トイレは、いいんですか? 早く済ませて帰り、なさっ、い」

 いいところを亀頭でつんと突付かれ、あえぎ声が飛び出しそうになるのどを必死で締め付ける。

「でも、苦しそうな声が聞こえてくるよ?」

「ちょ、っと、音を聞かれるのはは、恥ずかしいの、でっ……早く、トイレを済ませて下さっ、いっ」

「はーい」

 ああ、聞こえてくる。井上君の、おしっこをする音が。じょろろろっと、大分溜めていたのか、それはとても長い。

 竹川先生の荒い息が耳元にかかってきた。

 ――このタイミングで乳首を摘まないでくれっ!

「っぅっ」

 すごい。何これ。気持ちよすぎて腰が抜けそうだ。

 中を暴れまわる熱に翻弄されてしまう。頭の先からつま先まで、電流が走ったみたいにびりびりとする。

 アンモニアの匂いが鼻に付く。

 ふぅぅっと、井上君の、排泄をした後の気持ちよさそうなため息が聞こえてきた。

 穴を締め付けてしまっては音が響いてしまうかもしれないので、必死にそこの力を緩めると、容赦なく奥までペニスを突き立てられた。

 乳首を強く摘み上げられ、半開きにしてしまう唇から唾液がぼたぼたと床に零れ落ちてゆく。その感覚ですら気持ちよくて、理性が飛びそうだ。

 早く。井上君、早く済ませて帰ってくれ。

 もう駄目、声を……堪えられる自信がどんどん、磨り減ってゆく。

「先生、本当に大丈夫?」

 やめてくれ。声を掛けないで。答えられない。

 ゆっくりと引き抜かれてゆくペニスを追いかけるように、自分の肉がひくつくのがわかる。

「先生?」

 返事をしなければ。でも、苦しい。息が、上がって、この暴れまわる熱が……しかし、僕は教師なのだ。

 幾度も唾を飲み込む。ゆっくりとまた入ってくるペニスの感覚を頭から振り払おうとするのだけれど、どうしても、駄目で……

「だい、じょうぶだから早くっ、帰りなさ、い」

 ――言えた、ああ、言えた。

 ほっと気が緩んだ途端、首の横をざらりとした舌でねっとり舐め上げられた。

「はーい。また明日!」

 と、元気の良い返事の後すぐに、トイレのドアが閉まる音を聞いた瞬間、今までのじれったい動きとは違う激しさが襲い掛かってきた。

 すさまじい勢いで、硬く、太いペニスが中を埋めてゆく。

「よくできました」

 なんて、耳元で囁かれて……先生。竹川先生、貴方はそうやって僕を、駄目にしてゆく。

 激しく腰を打ち付けられて、腸が内側から破れてしまいそうだ。

 すごい、何これ。身体のもっとも深いところでマグマのような熱の氾濫が起こる。悶えるような快楽に、もう、声が――

「あっ、竹川、せんせっ、っ、あっ、ぁつ、っ、そこっ!」

「中、どろどろですよ。こんなに熱くして……」

「もっと、もっと摺って、こすって、ぐちゃぐちゃにしてっ!」

 頭の中で快楽が弾けた。全身が敏感になっているようで、腰を撫でさすられるたびに身体がびくついてしまう。気持ちいい。気持ちいい。気持ちいいっ!

「っ、最高っ」

 竹川先生の声に、喜びが全身を駆け巡った。

 胸元に這ってくる指、そこ、乳首、もっと……

「捻って、引っ張ってっ、乳首っ、かゆっ、お願っ」

 すぐに願いは叶った。何度もこねくりまわされる乳首が身体の熱と息を上げてゆく。

「前、触れて欲しいですか?」

「触って。触ってっ!」

「ねぇ、上代先生。触って欲しい時はどうおねだりするのでしたっけ?」

 中、じんじんと痺れてる。何度も押し寄せる高波に果てる予感を覚えども、確実な引き金を引いてもらえなくてもどかしい。

 個室のドア。汚いとわかっているのについ、ペニスを押し付けてしまって……

「好きっ。竹川先生っ、愛してますっ、お願いですからっ、お、おちんちん、こすっれくらはっ」

 イキたい。イキたいっ。も、駄目っ。精液出したい。それしかもう考えられない。

 中を揺さぶられた。おちんちん、僕のそこで、暴れまわって、何度も気持ちいいところをこすられて。どんどん股を開いてしまう。

「もっと。もっと、っぁっ! 下さいっ、奥に、竹川先生のペニスっ、おちんちん、っあっ! ねじ込んでくらっはっ、つぅぁぁっ!」

 ああ、握られた。おちんちん、こすられた。根元から。

 そこ、裏筋、ああ、駄目っ、指先でこねったらもう、ああ、イク、いっちゃうっ、ああ駄目、イクっ!!

「っあああっ、っぁっ、ああぁぁぁっ!!」

「上代先生っ!!」

 熱っぽい声を受けながら、激しく痙攣する全身の動きを止められぬまま、頭の中に広がる白い景色へ身をゆだねた。

 息を肩で整えているうちに、竹川先生のペニスが中からずるりと抜き出てゆく。その感覚ですら気持ちがよくて、精液が搾り取られてしまうかの様、先生の手の中へまたこぼれ出てゆく。

「よかったですよ、先生」

 腕の拘束を解かれた。そのまま身体を反転させられたので、竹川先生の腕の中へぐったりと身を凭れかけさせる。

「先生。顔を上げて? キス、させてください?」

 そんな風に、いつも、疑問符を付けて。この行為が強制的なものではないと言い表してくるのは、卑怯だ。

 こんなことはいけないのに。もう、竹川先生に抱かれなくてはイけなくなってしまった。

 雨。まだ降っているかな。だから先生はこんな風にゆっくりとキスをしてくるのか。

 二重のくっきりとしたまぶたが細められていて、やっぱり、猫のよう。

 流れ出す雨はいったいどこへ行くのか。この関係に終点はあるのだろうか。

 新卒採用された竹川先生は、先に教師という職に付いたにも関わらずいつまで経ってもドジばかりする僕へ、にこやかに話しかけてくれた。冴えない僕に、手を差し伸べてくれた。

 告白されたと同時に犯されたあの日。竹川先生は泣きながら、何度もあやまってきた。どうしても堪えられなかった、好きです、愛しています、どうか拒絶しないで下さいって、何度も、何度も。

 夜だった。校舎内の見回りを二人でしていて、音楽室で突然背後から抱きしめられた。そのときはまさか、自分が犯されるだなんて思ってもみなかった。そしてその後、彼がそんな顔を見せてくるのだと考えてもみなかった。

 ――触れ合う唇が温かい。彼の、雄の、匂い。

 いつのまに好きになってしまったのだろう。最初はただ、そんな風にしおれる竹川先生を見たくなかっただけなのに。納得して、恋をして付き合ったわけではなかったのに。

 お人よしですね、と、寂しそうに言われたあの時からかもしれない。本当は拒否をしたいのでしょう? と、悲しそうな笑みを向けられた瞬間に胸のざわめきを覚えたのだから――

 唇を割って舌が入ってきた。見ている顔は、頬が赤い。

 唾液で糸を引きながら唇を離してゆくその、いやらしさ。

「次はどこでセックスしましょうね?」

 長いまつげがかすかに震えている。心底愛しい者を見るような、温かい光が宿った瞳。

 やっと開放された手で胸元を強く掻き押さえた。

 ああ、ああ。

 きっと、この恋が僕を殺す。







END







2015/11/19
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