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 兄弟遊戯〜恋するパブロフの犬〜
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 R指定:有り
 キーワード:兄弟、ケンカップル、溺愛
 あらすじ:わだかまりを乗り越え、心を通じ合わせた卓哉と彰だった。だがそれでも尚、彰の溺愛は止まるところ知らずで……。
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「社長。卓哉さん、最近、おかしくないですか?」

受付嬢の社員が、彰に話し掛けてきた。

「兄さんが、何かおかしかったのか?」

「顔色が悪くて……今日もトイレに駆け込んで行かれたので、体調が悪そうに見えたんですけど……夏バテでもされたんですか?」

卓哉がおかしい。

そんな素振りは、彰には感じた事はなかった。

確かに昨日は平日にも関わらず、いつも以上にベッドでは盛り上がった。

風呂に入りたいという卓哉の言葉を無視してベッドに連れ込んだ。

その卓哉の匂いすら堪らなくなって、特に汗腺や神経の多く走る部分を、舐めて吸い上げた。

卓哉が嫌がると、更にその芳しい体臭が濃厚になるような気がして、彰はその媚態に酔いしれた。

更に、彰が最後まで靴下だけを脱がそうとしないので、卓哉が自分で脱ごうとして足掻いたが、その手首を縛ってそれをさせなかった。

靴下だけ残すという羞恥心と、縛られているという背徳感は、卓哉のタガを外れさせ、理性を失わせた。

卓哉の激しい腰の動きに煽られて、彰も我を忘れてしまった。

コンドームがいくつあっても足りないのではないかと思う程に、何度も射精し続けて、途中からはそれを付ける事すら面倒になって、生で中出ししてしまった。

おまけに、今朝も風呂で中を洗ってやると言いながら、卓哉の喘ぎ声が室内に反響するのに発情して、また挿入してしまった。

あれは流石にやり過ぎたと、自分でも反省する。

それでも家を出る時は「平日に無茶するな」と言って、彰の腹にボディブローを決めて来る程には、元気だったと思う。

「……それで、兄さんは?」

「昼までには帰るとおっしゃって、外出されました。行き先は、聞いておりませんけど……どうしましょう?」

彰はスマートフォンを取り出して、卓哉に連絡してみるが、電源を切っているのか繋がる兆しがない。

イライラとしていると、午前中に予定していたクライアントがエレベーターから出てくるのが見えた。

彰は仕方なく、仕事に戻るしかなくなった。



結局、その後も卓哉を捕まえる事が出来なくて、やっと会えたのは自宅に帰ってからの事だった。

会社からすぐの自宅は、歩いて通える程の距離だったが、行きも帰りも二人が別々に帰る事は今まで一度もなかった。

どちらが仕事が残っていても、必ず待って時間を合わせて帰る。

彰が仕事を終えて携帯を確認すると、先に帰っているというメールが入っていたので、慌てて帰宅した。

玄関を壊さん勢いで扉を開けると、夕食の準備をしている卓哉が出迎えてくれた。

その姿は、彰が一番堪らなく好きなエプロン姿だ。

特に今の夏の時期は、ボクサーパンツの上にエプロンをするものだから、何度となく背後から抱き付いては肘鉄を食らい、玉砕していた。

彰は帰るなり卓哉を抱き締めて、その背中を撫でた。

「卓哉。どこか具合悪かったのか?やっぱり、俺、昨日のセックスはヤり過ぎだったか?」

「確かに、昨日は俺、死にかけたぞ。お前、何発、出んだよ……。底なしかよ……」

数えていた訳ではないが、正の字を書いていたら、確かに最低でも二回は書けるだろうとは思った。

「昨日は記録的にスゴい回数だったな。俺もまだヤれそうだった自分がスゲーと思ったぜ」

「……お前の下半身、絶対に壊れてる……。歯止めのビスが外れてるぞ。……一回、病院に行って調べて貰って来い。精巣が人の倍とか付いてるかもしれない」

「そんな特殊な股間なら、見た目も明らかだろ。俺、何者だよ」

「化け物だろ」

その化け物が既に下半身を熱くしているのを察して、無理矢理ダイニングテーブルに座らせた。

彰は外に出ると高級料理店に行くことが多かったが、卓哉の作る食事に関しては庶民的な物を特に好んだ。

今日は夏らしく冷やし中華だったので、彰が帰る前に用意していた食材を乗せて、タレをかけてやった。

特に彰の味覚は子供っぽい所があって、タレの類いはたっぷり掛けてやらないと後からの文句がうるさい。

相変わらずの豪勢な食欲の前に、卓哉は呆れるばかりだった。

「……卓哉……。食べねぇのか?」

「いや……。俺、さっき、つまんじゃったからさ」

「そうか」

卓哉は、彰が食べているのをよそに、ソファーへ座った。

そして気だるそうに、ソファーの肘掛けに頭を乗せて横になった。

食事も取らずに寝ようとするその姿を見て、彰は再び心配になった。

「おい。本当に大丈夫か?今日も仕事、途中で抜ける程に辛かったんだろ?」

「大丈夫だよ。病気でもないんだし」

彰は冷やし中華をかき込むと席を立ち、自分も卓哉の隣に腰掛けた。

「それにしても辛そうだぞ?」

「……それは、お前が毎日激しいから……」

「卓哉……お前、煽んじゃねぇよ」

彰は、横になる卓哉のTシャツの中に腕を忍ばせて、その脇を直にくすぐった。

「あははっ!やめろよ、馬鹿!くすぐったいだろー!」

「馬鹿はお前だ、卓哉。エプロン姿なんて、ヤベぇに決まってっだろ?チクショウ……何なんだよ!俺は思春期の童貞かよ」

彰はもう片方の手で、下着の裾から手を差し入れて、卓哉の急所を妖しげに揉み上げた。

「あはぁっ!……いゃぁっ!あぁん!」

卓哉は、本当におかしいかも知れない。

普段の男らしい卓哉からは想像の出来ないような、いやらしい声が発せられて、彰のぺニスは最早、服の下で暴発直前になっていた。

「お前……どうしたんだよ。何か変にエロいぞ?尻も……何にもしてねぇのに柔けぇし。……まさか、一人でオナってたんじゃねぇだろうな」

「指っ……指、ダメだっ……!奥まで挿れるなぁ!」

「卓哉ぁっ!」

彰は堪らなくなって、卓哉のボクサーパンツを引き摺り下ろした。

「いゃぁっ!」

卓哉の今まで聞いた事もない色っぽい声が腰に直撃して、彰はジーンズの中で達してしまった。

思わず、卓哉の体の上で突っ伏してしまう。

中学から女を欠いた事のない彰は、こんな失態は生まれて初めてだった。

ズボンを下ろす事なく、射精してしまうなんて、卓哉の言う通り、下半身のビスが外れてしまったのではないだろうか。

本当に自分は、童貞かと疑うような早さだった。

「え?え?……まさか……彰……。もう、達っちまったんじゃ……」

「うるせぇ!お前が、何かエロい声出すから悪いんだろっ!何が『いやぁ』だ!俺を殺す気か!」

「知らねぇよ!お前が勝手に一人で達ったクセに!俺のせいじゃ……ぁっ!……あぁっ!……ダメだっつってんだろっ!」

卓哉は激しく彰の腹部を蹴り出して、挿入を拒んだ。

しかし、その蹴りも何だか心もとなくて、とてもサッカーをしていた卓哉の蹴りとは思えなかった。

「本当に具合、大丈夫なのかよ……卓哉。お前……らしくねぇぞ?何か……俺に隠してるだろ」

「……彰ぁ……」

卓哉の語尾が伸びた声は、彰のぺニスを狂わせる。

またしても、達しそうになるのを彰は堪えた。

「……俺……出来た……らしい」

「………………………………………………はぁ?」

「だからっ!出来たって言うんだよ!」

「何が?」

「赤ちゃん!」

彰は、ソファーの上から転げ落ちた。

ついでにローテーブルに後頭部をしたたか打ち付けてしまい、余りの痛さでその場にうずくまった。

「なっ!なっ!何だと〜?!」

「今、妊娠初期だって……」

頬を染める卓哉は超絶に愛らしいが、そんな非現実的な事が、本当にこの世の中に有り得るのだろうか。

彰はパニックに陥った。

「……卓哉……。お前、男だったよな……」

「毎日ヤって、見てんだろうが」

「見てる……。今も見てるが、……お前に子宮はねぇぞ?」

「ところがエコーに写ったんだよ……子供の影が」

「俺をからかってんじゃねぇよな?」

「何だよっ!お前、俺に子供が出来たら認知するって言ってただろっ!子供、可愛がってやるって言ってたのに……」

卓哉の瞳からポロポロと涙が零れ始めた。

彰は慌てて卓哉の涙を唇でキスをしながら拭ってやった。

「あっ……当ったり前だろ!俺とお前の子供なんだから、可愛いに決まってんじゃん!当然だろ?」

卓哉は彰の首に抱き付いて来た。

「本当に?」

「本当だ」

卓哉が彰へねだるようなキスをする。

そして、彰の猛る股間を撫でながら、息を荒げていた。

「奥まで挿れなかったら、セックスして良いって……医者が……」

卓哉はエプロンの裾を自らめくり上げて、足をMの字に拡げてみせた。

「卓哉ぁーーーーー!!!」

彰の意識はそこで途切れた。



鼻の下にタラリと生温かいものが伝うのを感じて、彰は意識を取り戻した。

それを拭うと、手が真っ赤に染まっている。

ベッドの隣を見ると、唖然とした顔の卓哉が、口をパックリと開いてこちらを凝視していた。

その直後、卓哉の大爆笑が室内を響き渡った。

「彰〜!何、お前!鼻血なんか垂れてんの?何だよ〜?エロい夢でも見たのか?あんだけエロい事してて、まだ夢でもエロい事してんのか!」

「……え?だって……卓哉が妊娠して……」

「ひぃぃぃぃぃぃい!腹が痛い〜!彰が狂った〜!」

卓哉はベッドの上でのたうち回っていた。

そこで、どうやら自分は夢を見ていたらしい事が理解出来た。

考えたら、あんなに色気のある卓哉は現実には有り得なかった。

夢での空想の卓哉は随分と色っぽかったが、やはり今、目の前にいる卓哉の方が彰の胸を熱くさせる卓哉だ。

「何だよ……そんなに笑わなくてもいーだろ。本当に孕ますぞ、この野郎」

「あっはっは!ゴメン、ゴメン!ほら、鼻血、拭けよ」

笑いながら卓哉はサイドボードからティッシュを引き抜いて、彰の鼻を吹いてやった。

心なしか赤くなってむくれている彰が可愛く思えて、その頬にキスをしてやると、彰の機嫌はすぐに治った。

「なぁ、このまま、本当に種付けしても良いか?」

「良いけど顔、洗って来いよ。そのままだと俺、笑ってセックス出来ないぞ?」

彰は卓哉にキスをしてから洗面所へ向かった。

彰とこんな笑い合える日が来るとは思ってもみなかった卓哉は、甘い幸せの余韻に浸っていた。

ーENDー







2020/09/27
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